第6話 VS チンピラ
異能力者か。
例の誘拐事件の異能力者かは分からない。しかし、攻撃を仕掛けてきた時点で敵なのは明白。
「初めまして、だよな? 出会い頭襲いかかってくるなんて随分な挨拶じゃないか」
「お前らと話すようなことは何もねぇからな! ちゃちゃっと済ませて、さっさと帰らせてもらうぜ」
俺たちの事を知っているのか……? しかも、話しぶりから裏に別の誰かを感じる。
「俺はあんたみたいなチンピラに襲われる理由はないはずだが?」
「あぁ? 誰がチンピラだよ、こら」
「話し方からしてそうだろ」
金髪にピアス、ちゃらちゃらした服装といい見るからにチンピラだ。人は見かけで判断してはいけないと言うが、やってる事もチンピラっぽいのでチンピラでいいだろう。
「だから違ぇって……まぁいい。舐めた口聞けねぇように、痛い目に合わせてやらぁ」
「だから言い方からして……まあいいか。津久里! 異能を使ってくれ!」
こちらの手札を推測されないように意識しながら声を張る。が、一向に結界が張られる気配がない。
「逃げたか」
そもそも、異能からして戦闘向けではないため仕方の無い事か。とは言っても、転移魔法も決して戦闘向けではないが。
「異能……? てめぇらも、この不思議な力が使えんのか」
「まあな。あんたと同じ、爆破の能力だ」
「あんだと!?」
異能についての知識はなし。そして、俺たちに対する知識もないと見るか。
「だから迂闊に動かないことを勧めるよ。下手に動けば、あんたの足下を爆破してやるぜ?」
「……はっ。ボロだしやがったな、バカが!」
威勢よく罵倒すると、足下を爆破して勢いをつけて襲いかかってくる。
「おらぁ! 木っ端微塵になりやがれっ!」
大きく振りかぶった右の拳を難なく避けると、お返しとばかりに腹部を狙って拳を振るう。しかし警戒されていたのか難なく躱されてしまった。
だが、
「足下注意って言ったろ」
姿勢を低くして足払い。
体勢を崩した男が倒れ込んでくる。
「クソがっ!」
悪態をつきながらも俺の前に手のひらを突き出してきた。
「『ばく』」
「『テレポート』」
視界が変わり、男の背後に姿を見せる。と、同時に先程まで俺が立っていた場所が爆発した。
「なっ!? てめぇ、なんでそこにいる!?」
男は目を見開き、オレから距離を取った。
推測するに、こいつの異能は爆破。手のひらから、あるいは触れたものを爆破させる能力か。
「『幻影』。これが俺の異能だ。さっきまであんたが話してた俺は幻だよ」
「てめぇ、ふざけた真似しやがって!」
「暴れるのは勝手だが、あまりオススメはしない。この俺も幻だ。今からする行為は無駄な労力となる」
「なら、てめぇはどこにいるって言うんだよ!」
「言うわけないだろ」
そうとだけ答えると、俺は踵を返した。
いつでも襲ってきても良いと言わんばかりに、無防備な背中を晒して。嘘を吐く時は堂々と。そして立ち去る時は早々に。
「じゃあな。この借りはいつか返させてもらうよ」
「クソッタレが!」
俺の言ったことを信じたのか、あるいは警戒からか。男はそれ以上俺に対して攻撃を仕掛けてくることは無かった。
そうして俺は乱暴に壁を蹴りつける音が耳に入れながら、その場を去った。
津久里の異能がない状態で、『爆破』の異能力者と戦うのは被害が大きくなりすぎる。超常現象部に情報を持ち帰り、確実に勝てるように作戦を立てるとしよう。
俺は、つい先程登録したばかりの転移先を確認しながらそう考えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます