第9話 機械人形ロゼ

 僕に押し掛け弟子が出来た。

「師匠!私が得意の照明魔道具作るので、ご指導願えますか?」

 積極的なのは良いが、裏の素材山ではフランソワ製作出来ないだろう。


「製作指導はしてやるが、素材は?」

わたくしがいつも使ってる素材が、まもなく家から届きます」

「家から?家は近いの?」

「少し遠いですが、間も無く家の馬車が届けてくれます」

「馬車を所有って、フランソワの実家は商家か?」


「違いますわ、私の名はフランソワ・エンディ、二男二女の末っ子ですわ、家のお仕事私は不要、やる事が無いので父も魔道具師を目指す事賛成して下さいました」

「家名持ちって、お貴族様みたい・・・エンディ?男爵様の関係者か?フランソワは」


「男爵家の末っ子ですわ」

「ひぇえ~っ!!お貴族様!」

 僕は条件反射的に土下座してしまった。


「やめて下さい、偉いのは父エンディ男爵で、私はヒロ魔道具師、師匠のただの弟子ですわ」

 そんな事言われても、フランソワの正体知ると対応に困るぞ!


 工房横の駐車場に馬車が止まった。

「素材が届いた様ですわ」


 力仕事を、華奢なフランソワにさせる訳に行かない!僕は反射的に立ち上がり、表に向かった。


 店舗入り口の左側少し奥まった所に、住居用玄関が有り邸宅横の空地が駐車場だ。

 少し離れた場所なので走って行くと、大荷物を抱えた機械人形がやって来て、僕にペコリとお辞儀した。

「重いだろ?僕が半分持つ」

 機械人形は首を横に振り、魔道具店の入り口に向かった。


「ロゼ、ご苦労様!これで全部?」

 フランソワの問いに、ロゼと呼ばれた機械人形がうなずいた。

 言語機能は無いようだが、随分優れた性能の機械人形だ。


 店舗の奥、魔道具工房にロゼと呼ばれた機械人形がキョロキョロしてる。

「素材はそこの空いてる場所に置くと良い」

 僕が指示すると、ロゼは大荷物をそっと置いた。


 機械人形が、素材を大切に扱う態度に感心した。

「フランソワ、随分高性能の機械人形だな」

「私の魔道具製作パートナーですわロゼは」

「魔道具製作の相棒が出来るのか?」

「ロゼは優秀ですわ」


 フランソワと話て居る内に、ロゼは大荷物から照明魔道具用の素材を取り出し、製作し易い順に並べて行った。


 フランソワの実力がどの程度か、僕は何も言わず製作手順を眺めていた。

 これでは、普通の照明魔道具しか出来無いだろうな。


 製作は慣れている様だが、予想通りフランソワが完成させた照明魔道具は普通の物だった。

 僕はフランソワを誉めて伸ばすぞ!

「良く出来てる、魔力注入型魔道具、手慣れて居るのが良く分かった、製作時間も1時間掛けない手組、見習い魔道具師とすれば高位だ!」


「お褒めは嬉しいですが、師匠!正直な所を仰って下さい」

 僕は無言で照明魔道具の素材を並べて。

「この順序で組み立てて見ろ」


「順序が全く違いますね?上手く出来るかな?」

 フランソワは2時間以上掛け、完成させた。

「出来上がった照明魔道具に魔力注入してご覧」


 フランソワが魔力注入すると、照明魔道具は湖光こうこうと辺りを照した。


「わ!わわぁ!!これ本当に私が作った照明魔道具?」

「製作手順変えただけで、結果は凄いだろ」

「はい!!師匠はやはり凄いお方ですわ!」


「この手順はおおやけにはするな!秘伝だぞ!!」

「はい師匠!有り難う御座います!!」


「フランソワ、間も無く日が暮れるぞ、帰った方が良い」

「えっ?私ヒロ師匠の弟子でしょ?住み込みさせて下さい!」


「いやいや、お貴族様のご令嬢が外泊したらダメだろ?」


 僕は断るの下手、弟子ですから師匠のお世話もさせて下さいって押し切られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る