第8話 弟子入り?何で?

 あの女性客は、フランソワって名乗って帰った。

 フランソワって何か、お貴族様みたいな高貴な感じがする名だ。


 僕の様な職人には全く縁の無い存在だが、僕が生まれ育ったエンディ町は、会ったことは無いがエンディ男爵様が統治されてる町だ。


 開店初日は、特上客の来店で大儲したが、今日で3日開店休業状態で、全くお客が来ない。

 だからかな?法外な価格設定は、めったに売れない魔道具作りの職人が生活する為に決まった金額か。


 僕がボンヤリ店番してるのは、今日は専門学校でやる事が有ると言って、タクトさんが居ないため話し相手も居なくて退屈してるからだ。


 裏のゴミ山、じゃ無かった素材山で魔道具作りでも遣りたいが、タクトさんが描いた絵をもとに作成しないと、僕が勝手に魔道具作るのは「ヒロミ先輩が君の為に集めた貴重な素材の無駄使い」って禁止された、ゴミにみえるんだけど。


 そうだ!こう言う時こそドアベルセットして食材庫をあさって美味しい物でも作るか。



 真面目に店番してる時には誰も来ないのに、奥に入った途端ドアベルが鳴った。


 大慌てで店に帰ると、初日に指輪時計魔道具を購入したフランソワさんが来店していた。


「魔道具師さん、こんにちは」

「フランソワさん、いらっしゃいませ!」


「これ、絵を描いて持って来ました、この絵の感じで会話魔道具って作れます?」


 フランソワさんが描いた絵は、凄く上手でバラの花が中央に描かれた女の子っぽい会話機だった。

「これ程綺麗に描かれていれば、オーダーメイド会話機作成は可能です、魔力注入型で良いですか?小型化出来るので」

「魔石作動型は安価だけど不便なので、値段は高くなっても魔力注入型が良いです」


「小型携帯会話機ですと、開店記念割引価格でも金貨50枚に成りますが、その分100㎞の距離でも会話可能な機種にします」

「100㎞?ですか?普通1㎞内でしか会話出来ないのに、小型携帯会話魔道具なのに凄いですね!是非お願いします!!」


「奥で製作してまいりますが、その前に飲み物を用意します」

「飲み物はけっこうです、まって居るのは退屈なので、魔道具師様が作業される所を見せて頂けませんか?」

「構いませんが、面白いものじゃ無いですよ」


 何でこう成ったか、ダメと言えない性格なもんで、フランソワさんと裏の素材山の前に居る、僕は絵をジックリ眺めて素材に魔力を流した。

 又々異常に小さくなって、絵はショルダーバッグ型だが、片手で持てるペンダントより少し大きい位の物になった。

 絵にはショルダーベルトが付いてる、ベルトは付いてるが首からぶら下げるしか出来無い細い紐になってしまった。


「凄く可愛い携帯会話魔道具ね!魔力注入して会話確認して良い?」

「どうぞ、気に入って頂けたならそのままお持ち下さい」


 フランソワさんは、手慣れて居るようで、魔力注入して誰かと会話をはじめた。

「お父様・・・そうヒロ魔道具師工房に居ます・・・この会話魔道具ご覧になれば・・・夢を叶えて良いのですか・・・ありがとうございます、では頼んでみます」


 終わったようだ。

「携帯会話魔道具、お気に召しました?」

「はい!!これで金貨50枚は安過ぎです!ヒロ師匠フランソワの弟子入りお父様の許可が出ましたわ」


「はいぃ?何と言った?」

「今日から私フランソワは、ヒロ師匠の弟子になります!」


「はぁ」

「弟子入り了承ありがとうございます!!」

 溜め息だよ!僕は了承なんてして無いぞ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る