第2話 悔しい卒業試験

 僕は記憶力は優れてる、誰よりも真面目に勉強し各種魔道具製作レシピは教師に教えられた全てを暗記してる。


 魔道具師の多くは、レシピ通り集めた素材に魔力を込めて魔道具を製作するものだが、僕はそれが出来ない、魔力が無い訳じゃ無いが出来上がりは、不細工で作動しにくい魔道具しか出来ない。


 なので、魔力無しの魔道具師が、素材を手順通り手作業で組み立てる方法を見習い、僕は訓練して来た。

 手作業組み立て魔道具は、魔力製作品ほど綺麗な魔道具でない欠点は有るが、使える物は出来上がる二流品だけど。


 今日は2年頑張って勉強した成果、魔道具製作の卒業試験の日だ。


 僕を含む10人が卒業試験を受験する。

 魔道具製作は集中する為、受験の審査官は付くが気が散らない個室で行われる。


 僕に当てられた個室に入ると、中央に魔道具作成課題が張り出され、余分な物が含まれた素材がランダムに用意されてた。


 試験時間は二時間、課題は『魔力注入型会話機』と書かれて居た。

「やった!何度も作った魔道具、楽勝だね」


 僕は素材を選り出し、組み立てて行った。





 制限時間を30分残し、魔力注入型会話機が完成した。

「審査官殿、完成しました」

「まだ時間はある、作動確認しなくて大丈夫か?」


「作動確認は済んで居ますが、通話は相手会話機が無いと確認は不可能です」


「そうだな、真面目に学んだヒロの会話機が審査用会話機と通話出来る事を祈って居るぞ」

「審査官殿!有り難う御座いました!」

「いや、その言葉はまだ早い、卒業試験に合格してから言ってくれ、では魔道具師見習いヒロの卒業試験を終わる」



 審査官殿の宣言で、職員が入室し僕の製作品を慎重に、10作品展示場に運んでくれた。

「あれ?僕が最後?」

「遅いぞヒロ!俺達待ちくたびれて昼寝してたぞ」

「相変わらず奇っ怪な魔道具作ったな」

「最初気味が悪かったけど、最近は楽しみになったぞ」

 僕以外の9人全員、魔力作成の魔道具師見習いだった、そりゃ早く済むわ、僕みたいな手作業する魔道具師は卒業認定されにくいからな。



 作動確認は簡単、審査用会話機が500m、1000m、10㎞、100㎞地点に置かれ、会話出来た地点の審査官の応答で合否が決まる、合格基準は1000m以上。


 完成順に審査が実施された。

 殆どの会話機が1000m、合格ギリギリの地点からの応答だった。

(この会話機が、その程度の機能を想定された物だから、当然の結果だ)


「ゼルト製作機種10㎞より応答有り!!

「「「「「「「「「「おぅ!!!」」」」」」」」」」

 試験結果を見に来た、魔道具製作所の所長達から感嘆の声が上がった。


 続いて僕の会話機の製作確認。

「ヒロ製作機種100㎞より応答有り」

 予想は出来てた、僕の魔道具は全て異常な機能を発揮する。


 所長達や審査官全員、感嘆で無く残念な物を見る目で、僕の魔道具を見てる。


「以上!全員合格認定され、魔道具師の書状を与える!!」


 首席卒業はゼスト、ギリギリ卒業が僕って結果になった。

「魔道具は需要が有って購入してくれる顧客が有って成り立つ!ゼストの作品は機能美の優れた物だ!一方ヒロの作品は機能は異常に優れて居るが、外観が奇っ怪過ぎ購入してくれる顧客は居ないと、所長達全員が言っておる・・・」


 分かっては居た事だが悔し涙で辺りが霞む・・・でも、卒業認定され魔道具師と認定された。


 予想通り僕を受け入れる、魔道具製作所は皆無だった。

 卒業出来た皆が、僕の肩を叩いて祝ってくれたのが、せめてものなぐさめだった。

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