第31話 反撃はオメガの手が届かない場所で

 オレとルノの冷戦状態が続く中、事件は着々と解明されていった。

 結論から言うと、父と義母は利用されたようだ。

 王妃のお腹の子が、男オメガだという情報は漏れていた。

 そして、オメガが国王になる可能性を恐れて、貴族たちが計略を巡らせていたらしい。

 オメガの地位向上を面白く思わない貴族や有力者が暗躍し、一連の事件に噛んでいた。

 まだ実行段階に至っていなかった計画のなかには、かなり酷い内容のものも含まれていたようだ。

 ルノから説明を受けたものの、その辺は言葉を濁されてしまった。

 オレに媚薬を盛られた件は、王族の所に男オメガが出入りすることを面白く思わない者たちにより仕掛けられたようだ。

 媚薬だったのは、オレが妊娠でもすれば仕事が出来なくなるから、という単純な理由だった。

 確かにヒート時の妊娠率は高いし、狙いとしては間違ってはいない。

 ルノの子供ってことは侯爵家の跡取りになるわけで、大事をとって仕事を辞めさせられる可能性は高かった。

 オメガの地位向上が面白くないなら、侯爵家の跡取りを男オメガが産むのはいいのか、って話にもなるのだが。

 その辺はどうでもよかったらしい。

 オメガが産むのは当然だし、女性の地位が低い我が国では、侯爵夫人が男オメガでも地位向上とは受け止められないそうだよ。

 なんだそれ。

 オレの父と義母は利用されただけということで、田舎の領地に送られて軟禁ということで決着がついた。

 まぁ年も年だし、ランバート伯爵家の領地は温暖で住みやすい所にあるから、結果的に良かっただろう。

 もう代替わりする時期だしね。これでノイエル兄さまも結婚しやすくなっただろう。

 オレにも甥っ子か姪っ子が出来ちゃうかもしれない。それはそれで楽しみだ。


 だが、これでオメガの将来が明るくなったとは思えない。

 だいたい暗躍する輩が居るという事は、第二第三のヤバい奴らが出てくる前兆だよね。

 これから先も警戒が必要だろう。

 そのためにオレは、オメガを守るための魔法道具を作らなきゃ、と、思うわけだが。


「キミは屋敷にいて。仕事もしなくていい」


 頑固な旦那さまは、オレの要求なんて聞き入れてくれやしない。

 そもそもさー。

 自分が被害者になった事件なのに、何も出来ずに報告だけ受けるって何なのー?

 コレってさー。こんな形で正解なわけ?

 オレには、そうは思えないんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る