第2話 世界事情



突然現れた謎の少女と推定俺と同じ元一般人の男がぶつかり合う。

そんな風景を俺はただ、見ているだけだった。

男は俺の作った木刀を粉々にしたのと同じようにバットに光を纏わせる。

そして男はそれを少女に向けて放つ。


「…まずい。」


思わずそう口にした。

あの少女はあのバットの恐ろしさをしらない。

人だってあの状態のバットを受ければ、簡単に死ぬだろう。

だが、少女はバットにそのまま突撃をし、さらにはそのままバットを破壊した。


「…は?」


俺も奴も驚いた。

否、まずいと思った。

少女はそのまま男に向かって拳を振るう。

一方で男は自身の服を手で触れてバットのように光を纏う。

「…ッ!」

男の顔が歪む。

防御はしていた。

受け身もとった。

だが、それでは無駄だった。

男は思う。

見てくれはそこらの少女で自身よりも小さいものだが、その実巨大な動物。

竜と戦っているみたいだ、と。


「ガハッ…。」


男の口から血がでる。

この様子では内臓まで損傷しているだろう。

男はポケットから石を取り出すとそれを少女に向かって投げる。

その石はバットと同じように光を纏っていた。

少女はそれをかわすことなく、男に近づいていく。

ドン

大きな爆発がおこる。


同時に俺は、少し恐怖した。

先ほどのバットだってそうだった。

固有能力一つで。一体何人が殺せるのだろうか。

あの男の能力だって簡単に人を殺せるだろう。

俺の能力だって、それこそ鈍器を作れば人を殺せるだろう。

できるかはわからないが、銃だって作れてしまうかもしれない。

爆煙が晴れると少女は何事もなくたっていた。

奴もわかっていたのだろう。

男は顔を上げて目を瞑っている。

少女は男に近づいていく。

ダメだ。

いくら、俺を殺そうとしてきたからといってそれが奴を殺していい理由にはならない。

でも、俺が作れるものは木でできた簡単なものやフライパンなどが限界だ。

何故だかわからないがそう感じている。

ダメだ。

自分じゃ止められない。

でも、あの少女は信じたくはないが俺の能力のはずだ。


「頼む。殺すのは待ってくれ!」


そう叫んだ。

この時は必至だったからどんな顔をしていたのかはわかないけどたぶん、ひどい顔だっただと思う。

しかし、少女は思うようには動かなかった。

何も言わずこちらを見るとすぐさま男の方へと向きなおす。

そうしてゆっくりと手を上げる。

俺は走る。

そして滑りこむように少女と男の間に入る。


「待ってくれ!」


そんな俺を見て少女は不服を露にした顔をする。

「ナゼ?そこの男はお前を殺そうした。そうだろう?」

そう口にした。

止まった!と思いつつ彼女をなだめるように説明する。

「…えぇと、殺そうとしたからってこっちが殺すのは違うだろ?」

「違わない。それに…この世界で不殺は無理だ。」

…この少女は正しいのかもしれない。

十万ポイントを集めるなんて簡単じゃないというか人を殺さないとできない。

「でも、まだ帰り方がそれ一つとは限らない。」

少女は考えこむように俯く。

「否。イナイナイナイナイナ。


ワカラナイ。

何故?そこまでして正規ではない道を行く?」


「それはこっちだってわからない。でも、俺を含めて誰にも死んでほしくないと思ったからだ。少なくとも俺の前では死なせたくない。」


俺だって死ぬのは怖い。

でもそれはみんな同じなはずなんだ。


「…偽善か?」

「偽善だ。」


少女の問いにすぐさま答える。

少女の顔は相変わらず無表情だ。


「…わかった。ならば、今は下がろう。…また呼べ、お前にならまだ協力してやる。」


少女はそう言うといつの間にか消えていた。

男はその光景を見て笑っていた。


「…なんだよ。助けてやったのに。」

「ハッハハハ。すまねえ!いや、なに。殺されかけた奴を助けるほどのお人よしがいるとはな!ま、いいぜ。お前の案。今度こそ受けてやる。」


俺はハアとため息をつきながらスマホを出そうとする。


「待て。また攻撃しないよな?」

「なんだよ。俺がそんなことすると…いや、さっきしたか。安心しろ、俺は生かされた命はちゃんと恩で返すぜ。それに。」

「それに…?」

「人のために生きるってのも悪くねえって思ったんだ。お前を見てな。」


男はそういうとスマホを取り出し俺に見せる。

「これが俺の連絡先だ。ま、しばらくお前と一緒に行動するがな。」

「…必要か?それ。」

「必要だろ。お前、この世界のこと。何にもしらねぇんだろ?

まあ、だからこそ俺は狙ったわけだが。」

「…。」


初心者狩りということでいいのかそれは。

でも俺も能力に助けられたばっかだし…


「そういえば、パッシブと固有能力の違いってなんだ。」

「それはだな。常時発動型かどうかって感じだな。パッシブは常時発動だ。…ちなみにパッシブも固有能力も数は人によって違う。最低で一。最大で五ってのは共通だ。俺は固有能力は一つだけだし。パッシブも二つだけだ。もちろん、一つだろうが五つだろうが能力の強さは運しだいだがな。…まあ、その点お前は人?かわからねえものを召喚する能力考えれば当たりだろうな。」


俺の能力は当たりなのだろうか。

いや、この男を圧倒できる少女を召喚できるってのはやばい能力だと思うしものを作って自分で強化して戦うこともできるはずだ。

それにまだ文字化けしたもう一つの固有能力もあった。

戦闘に関しては優秀なのかもしれない。

だが、俺は戦闘を望まない。

ふと、少女の言葉を思い出す。

『お前にならまだ協力してやる。』

お前になら。

この言葉通りなら彼女には前任の能力所持者がいたはずだ。


「なあ、固有能力って死んだ後、どうなるんだ?」

「…何が言いたいのかはしらねえが能力ってのはガチャ的なシステムで決まってそれが同時に被ることはねえ。まあ、死ねば。ガチャに戻るんじゃねえの?」


俺はすぐ、あの少女を呼ぼうとするも何も起こらない。

スマホの固有能力を部分をタップ。

心の中で叫ぶ。

おーいと呼んでみる。

…急に読んだので男が驚いたのはご愛敬。

そんな俺を見かねてか男が俺に話しかけてくる。


「何がしたいやら。ほら、いくぞ。あの嬢ちゃんはたぶん戦闘とかしか出てこねえよ。そういえば、名前言ってなかったな。俺は鬼月居織だ。よろしくな。」

「俺は龍嶋森羅だ。頼むぞ。居織。後から、恩は返したって言って逃げるなよ。」

「ハッ。言われなくともわかってるよ。」


俺の不祥事から起こったこのデスゲームはここから始まるのだ。




_____________________________



後書き的なやつ


便宜上二話目ですが、プロローグが終わった感じに近いです。

正直に言いましょう。主人公龍嶋森羅はデッドエンドをもう二つもかえくぐっています。主人公補正というやつでしょうか。

実はですね。龍嶋森羅はこの作品の構想を考えたときにはこんなジャンプの主人公みたいにするつもりはありませんでした。

ですが、少々主人公にパッと思いつくような印象を与えるものと考えればこの性格になってしまったんですよね。

まあ、今後も頑張っていくので応援してください。





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