第2話

 千花が選んだ映画は恋愛映画だった。

 恋人同士が、引き裂かれてしまう場面から物語は始まる。

 いかにも千花の好きそうな映画だ。

 しかし、その映画は雪音にとってひどく陳腐なものであった。

 それなのに、涙を流す観客は多い。


 雪音にはその理由がよくわからない。

 千花の方を見ると彼女も泣いている。


 雪音に言わせれば、この映画を見て泣くなんておかしなことだ。

 それに彼女の表情はとても愛おしげだ。

(まるで、本当に恋をしているみたい)

 どうしてそんなふうに見えるのか不思議だった。

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