氷花

及川稜夏

第1話

 千花のことは知っていた。

 絶対に関わることはないと思っていた。

「ねえ、あなた、映画好きなんでしょ」

 千花に話しかけられても雪音は無言でいた。

 こんなところで関わるなんて予想外だった。


「あたしね、大の映画好きよ」

「……」

「ねえ、一緒に見ようよ」

 千花は強引にチケットを二枚買う。

 そして、ポップコーンや飲み物まで買い込んだ。

「ほら、これ、あなたの分だから食べて」

 そう言って、千花は買ったオレンジジュースを差し出す。


「……ありがとうございます」

 雪音は仕方なく礼を言った。

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