第9話 目覚めた朝は2
慌ててドアを閉めると
「こっちだよ」
起きてきたコウさんが隣のドアを指さす。
「着替え出しておくから、シャワーも浴びておいで」
そういうと、ポンポンと優しく頭を撫で、コウさんはにこにこしながらもう一つのドアへ行った。
「・・・はい・・・」
シャワーから出るとたたまれた洋服が置いてあった。
Tシャツにパーカーとひざ丈のジャージ。
一番上にはまだ開封していない新品のボクサーパンツがあった。
脱いだパンツの代わりにこれを履けということなのだろう。
だぼっとした黒のパーカーだからブラは付けなくてもいいかな。
ずれ落ちてしまうので、ジャージの紐を固く結ぶ。
一緒に置かれた紙袋に私が着ていた服が入っていた。
鏡の前で濡れた髪を乾かしていた。
さっきシャワーを浴びながら、自分の体を観察しながらしっかりと体を洗った。
キスマーク的な跡もついていなかった。
でも付けられてないだけかもしれないし。
でも、服着てたし。
でも、コウさんの来てた服をそのまま私に被せたっぽかったし。
でも、さすがに何かあったら気が付くだろうし。
でも、私一回寝たら起きないし。
「『でも』だらけだなあ」
とつぶやいた。
頭の中はぐるぐるしてしまっているとはいえ、随分とご迷惑をかけてしまったに違いない。
「申し訳ないなあ・・・」
ざっくりと髪を乾かして、脱衣所のドアをスライドさせた。
出るとそこはダイニングになっていて、コウさんがキッチンに立っていた。
「コウさん?」
お伺いを立てるように呼ぶ。
コウさんはフライパンの中の卵をくるっと返すところだった。
「っと。おはよ」
コウさんの優しい目が合ってドキッとする。
「おはようございます。あの・・・昨日なんですけど・・・」
コウさんはお皿に卵を移し、
「昨日のこと、覚えてる?」
と聞いた。
「・・・すみません。あまり覚えてないです」
「そうかなーって思った。
まあ、とりあえず朝ご飯を食べよ?昨日のこと聞きたいでしょ?」
「う・・・。はい」
「はははっ。めちゃくちゃ神妙な顔してる」
二人でソファの前にあるローテーブルに朝食を置いた。
そのまま、美琴は正座をし、深々と頭を下げた。
「昨日はご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」
「ちょちょちょ、土下座とかなし!土下座するのは俺の方だし」
と慌てるコウさんに、
「それは・・・つまり・・・コウさんが土下座しなくてはならないようなことをしたということ・・・?」
と美琴は頭を上げながら恐々と尋ねた。
「美琴は全く覚えてないの?それとも少しは覚えてるの?」
コウさんに呼び捨てにされ、どきりとした。
呼び捨てにされるような間柄になったということなのだろうか?
とりあえず、そこはスルーして昨夜のことを思い出す。
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