【ウミガメ小説 #1】消えた足跡の向こうに

ウミガメ小説

消えた足跡の向こうに

太陽が優しく照らす500万年前の大地。


湿った空気が肌にまとわりつく中、私はひとり歩いている。


私は優香(ユウカ)、27歳の自然愛好家だ。


都会の喧騒に疲れ、自然を求めて旅に出たものの、いつの間にか遥か昔の世界に迷い込んでしまった。


ここに来る前、私はいつも自然の中で心の平穏を見つけていた。


小さな頃から都会の生活になじめず、家族や友人に気持ちをうまく伝えられなかったからだ。


そんな私を慰めてくれたのは、近くの森や川、そしてそこで感じる自然の力だった。


だからこそ、大人になった今でも、自然を愛し、自然に触れて自分を見つめ直す旅を続けている。


周りには、現代では見ることのない巨大な動物たちが、のんびりと草を食んでいる。


空を見上げると、巨大な鳥が翼を広げて飛んでいる。


その光景に思わず立ち止まり、胸が熱くなる。


自然と笑みがこぼれた。


これこそ、私がずっと夢見てきた自然との一体感だ。


しかし、この美しい世界にも、どこか不安がよぎる。


この場所で、本当に自分の居場所を見つけられるのだろうか。


足元に目を向けると、小さな蟻がせわしなく動いている。


一生懸命な姿に心を引かれ、蟻の巣を覗き込んだ。


すると突然、穴からカナブンが飛び出してきて、私の方へまっすぐ突進してくる。


驚いて逃げようとした瞬間、私の体がどんどん小さくなり始めた。


あっという間に、蟻くらいの大きさになってしまう。


周りの草はまるで森のように大きく、石ころも山のようだ。


すべてが巨大に見える世界で、その場にしゃがみ込み、頭を抱える。


しかし、私は自然を愛し、自然の中で生きることをずっと望んできた。


小さくなった体で、世界を見つめ直すのも悪くないかな。


草むらを歩きながら、ふと目に留まったのは、小さな道しるべのような石。


じっくり観察すると、ただの石ではなく、何かの手がかりのようだ。


石が示す方向に進めば、500万年前のこの世界に隠された秘密が見えてくる気がする。


やがて、一つの洞窟にたどり着いた。


洞窟の中には古代の文字が刻まれた壁があり、文字は私に何かを伝えようとしていた。


文字を読み解くと、そこには「すべてのものは繋がっている」と書かれている。


この言葉が頭から離れず、しばらく立ち止まった。


現代で感じていた焦りや迷い。


自然の中で取り戻す本来の自分。


本当に繋がっているの?


わからないけど、ここに迷い込んだのも、きっと何かの導きなのだろう。


自然と共に生きる意味が、今ようやくはっきりと見えてきた気がする。


あなたなら、この世界でどんなものを感じるだろうか?

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