073.雨の日
「うわっ」
「きゃっ」
夜の街、その中でも住宅や昼しかやっていない商店などが並ぶ人が少ない道。
そこをルナとソフィーと三人で歩いていると、ぽつりぽつりと雨が降ってきた。
夜の空は厚い雲に覆われていたようで、すぐに土砂降りになった雨から逃げるように三人で走って店の軒先まで退避する。
雨を凌ぐために屋根の下に入りながら店を確認するとそこは既に閉店していて、店の中から漏れてくる光もない。
おそらく中は無人なんだろう、雨宿りさせてもらうには絶好の場所である。
民家だと中から家の人が出てきたりしたら気まずいしね。
「二人とも、大丈夫?」
「ここまで来るだけでもかなり降られたので、大丈夫じゃありませんね」
「うー、あたしもびちょびちょです……」
急な雨だったのと良い感じに雨を凌げる場所が見当たらなかったのもあって三人とも結構濡れてしまった。
夏だからまだマシだけど、他の季節だったら風邪をひいていたかもしれない。
そんなことを考えながら、濡れた服を絞ろうかな、でもソフィーたちの目の前で脱衣するのもななんて考えているとルナがソフィーを見ていった。
「ソフィー、下着が透けていますよ」
「えっ……、きゃっ!」
声を上げて自分の胸を隠すソフィー。
「み……、見ましたか?」
「見てないよ。黒とか思ったよりも大胆だななんて思ってないよ」
「見てるじゃないですかっ!」
だって見ようとしなくても見えちゃったんだからしょうがないじゃない。
「うぅ〜……」
恥ずかしそうにするソフィーがシンプルにかわいい。
「そう気を落とさないでください、ソフィー。兄さんはあとで私が処分しておきますから」
「怖いわっ!」
処分ってなんだよルナが言うとシャレになったないんだよ。
「大丈夫ですよ、裁判はちゃんとしますから」
「どうせ参加者はクランの女子メンツなんだろ?」
そんなの魔女裁判じゃん。
なんて話をしていると、くしゅんとかわいいくしゃみがソフィーから聞こえる。
「ふざけてる場合じゃないな」
「そうですね」
これで風邪でもひいたら大変だ。
まだ夏とはいえ、他の季節よりはマシというだけでいつまでもこうしているのもよくないだろう。
「それじゃ、 【乾燥】 」
指をパチンと鳴らすと、三人の服から湿気が抜けてすぐに乾く。
「これですぐに風邪はひかないだろ」
「そうですね」
「ありがとうございます、ユーリさん」
「どういたしまして」
あとは身体を温めれば完璧だ、なんて思っているとルナが自分の格好を確認してこちらに視線を向ける。
「兄さん、少しあちらを向いていてください」
「んー、まあいいけど」
もう服を乾かしてもうそのまま帰れる姿だと思うけど、ルナの様子を見るにまあ女子には色々あるんだろう。
「あと、壁を出してください」
「別に覗かないぞ?」
「人が来るかもしれないじゃないですか」
「それはそうか。じゃあ一回振り向くぞ」
幸いというか雨のおかげで視界は悪く、道には人が通る気配もないがそれでも可能性はゼロではないか。
「 【水鏡】 」
指を鳴らすとルナたちを囲うように水でできた鏡が生まれる。
上は覆ってないけど、まあいいだろう。
ちなみに鏡なのはこの前使ってなんとなくこの前使ったのを思い出したから、あと身だしなみを整えるなら便利だろうしという理由。
それから鏡の中ではもぞもぞと人の動く気配がしているけれど気にしないことにしておく。
まあ冒険者をやってれば外で着替えるのもその気配を感じながら気にしないようにすることも日常だからね。
同時に仕事中とは違って街中の、かつ日常の中で格好を気にする気持ちも理解はできるけど。
俺だって女性にモテるためなら格好くらいは気にするしね。
「もういいですよ、兄さん」
「はいよ」
再び指をパチンとして鏡を解除すると、そこには特に変わった様子のない二人。
いや、ソフィーの顔はさっきよりもさらに赤くなっている気がするけど。
風邪かな?
あと服は乾いたはずなのに、なぜかまだ恥ずかしそうに胸を隠している。
「下着は濡れてましたので脱ぎました。そのままだと気持ち悪いのと、また透けそうでしたし」
ルナのそんな爆弾発言に、いっそう恥ずかしそうにするソフィー。
「うぅ〜、あんまり見ないでください、ユーリさん……」
そんなソフィーは気の毒であり目の毒でもある。
もうちょっとどうにかならなかったんだろうか。
「兄さんが、下着も乾かしてくれてもいいんですよ?」
「別に見てもいいなら乾かせるけど」
「いいわけないじゃないですか」
「ですよね」
しかしまあ、見ないでやるのは難しいかな。
着たまま見えない状態だと乾かしすぎて繊維がズタズタになったり範囲がズレて肌がガサガサになったりするかもしれないので流石に責任は持てん。
じゃあ俺に下着を見せるかというと、それはそれで問題があるというのはルナとソフィーの共通見解のご様子。
それにソフィーのそれはちょっと俺にも刺激が強そうだし。
「ソフィーは胸が大きいですからね、実は」
「ルナちゃん!」
「別に俺は大きい胸が好きなわけでもないけどな」
小さい胸も好きだよ。
どっちにしてもルナは対象外って言うだけで。
「ですが、バーバラさんはソフィーよりも大きかったですよね」
「まあそうだな」
「リリアーナさんも、ソフィーと良い勝負ですよね」
「そこでなんでリリアーナさんの名前が出てくるかはわからないけどそうだな」
その勝負の結果は俺もとても気になるところだ。
ちょっとお金払うから、誰かこっそりとあとで教えてくれないかな。
まあソフィーはまだ15歳でこれからさらに成長する可能性もあるけれど。
「でも兄さんは私の胸には興味がありませんよね」
「それは別にルナの胸が小さいからじゃなくて、ルナがルナだからだぞ」
ルナの胸が平坦で、夏場のシャツ一枚でも膨らみを確認するのが難しいような戦力だとしても、俺はそれを理由にルナに興味がないわけではない。
たまに本人に対してネタにしたりはするけど、それも他の異性にはやらないし。
っていうかこの話はもうやめよう?
俺がルナの胸に言及するたびにどこかで俺の評判が下がってるような気がする……。
というか俺がルナに興奮してたらヤバいでしょうが。
「そうなんですね。てっきり兄さんは胸の大きい女性が好きなのかと」
「胸も大きな女性も好き、が正しいな」
どちらにも良さがあるというだけで、あと別に大小に振り切ってない中くらいのも好きである。
まあ身近に大きい人が多いのも事実だけど。
なんて事実を認識して、自然と俺とルナの視線はソフィーに向く。
「べ、別に大きくても良いことないよ……」
「ソフィー。私は自分の胸に思うところはありませんが、持つ者が持たない者にそういった物言いをするのは感心しませんよ」
「ご……、ごめんなさい……」
ルナのマウント力が凄い。
「ソフィー、ごめんね、恥ずかしい思いさせちゃって」
「いえ……、ユーリさんが悪いわけじゃないですし……」
まあ実際に俺の過失はほとんどないと思うけど。
それでもこういう時は謝るのがモテるための気遣いと心構えかなと思ったりもするのだ。
下着を外してソフィーはやっぱり恥ずかしそうだし。
ちなみに下着の下の方は大丈夫? とは流石に聞けなかったけど。
「んじゃまあそのままの格好でいいけど身体は温めておこうか。ソフィー、手を出してもらえる?」
「はい」
彼女の手を握る。
その拍子に、ソフィーに柔らかそうな胸が揺れた。
oh...。
☆続きます
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