042.ソフィーたちとお出かけ

「おはようございます、ユーリさん」

「おはよー、ソフィー」


今日もソフィーとお仕事をするために、クランハウスの前で待ち合わせて外に出る。

これは新人の支援であってサボりじゃないよ、ホントだよ。


ちなみに今日は二人っきりじゃなくて、他のメンバーも一緒だ。

まあメンバーといってもよそのクランのメンバーなんだけど。


「おはようございまーす」

「おはよー」


冒険者ギルドに着くと、そこには待ち合わせをしていた冒険者が三人。

いつもソフィーがパーティーを組んで貰ってる娘たちだ。

ちなみに全員女の子ね。


今日はこのメンバーでパーティーを組んで外に仕事をしに行くことになる。

まあソフィーがうちに来る前から何度か顔を合わせてる子たちだから特に困ることもないだろうけど。


「とりあえず、改めて自己紹介しようか。自分はユーリ、ランクは6、役割は色々」

「おおー」


自己紹介しただけで感心されるとちょっと恥ずかしいな。


「ソフィー、ランクは2、弓使いです」

「ササラ、ランクは3、槍使いです」

「メラ、ランクは2、魔術師です」

「ナスターシャ、ランクは2、治癒師です」


ちなみにみんなソフィーと似たような年齢だ。

若いっていいね。


「んじゃ俺は今日も盾持ってようかな」

「はーい」


ぶっちゃけ俺がいなくても回るように組まれているパーティーなので、なるべくみんなの邪魔をしないように心がけておくことにする。

とはいえ、この人数だと稼ぎも等分されるからそこそこ魔物狩らないとかな。


「テキトーに依頼選んでくるから、みんなは準備の確認しておいて」


言って俺は一人輪から離れて依頼を選びに行く。

そしてそのうちの一枚を選んで受付に持っていった。


「おはようございます、ユーリさん」

「おはよー、これお願いします」

「はい、確かに受け付けました。今日は皆さんとお仕事ですか?」


「うん、今日は森で野営するから、その監督役で頼まれたの」

「なるほど」


そう、今日はあの子たちとキャンプをすることになるのだ。


「女の子ばっかりでちょっとテンション上がるよね」

「彼女たちのうちの誰かと付き合えそうですか?」

「それは無理なんじゃないかな。どっちかっていうと保護者だし」


「ユーリさん、変なところで真面目ですね」

「まあよそのクランから預かってる子たちだからね」


いつも彼女欲しいと言ってる身からは心苦しいが、それよりも優先されることもたまにはあるのだ。


「なら事故には気をつけてくださいね」

「はーい」


そんな挨拶を職員さんと済ませて、メンバーの元に戻る。


「受付してきたよ。準備は大丈夫そう?」

「はい!」


元気な返事を聞いてうんうんと頷く。


「それじゃ出発しようか」




ということでやってきたのは王都近くの草原。

今日は大所帯なので、より稼ぐために魔物が大きな群れで行動している地帯にやってきた。


「ユーリさん、いました」


ソフィーが持ち前の目の良さで魔物を見つけてくれたのでそれを確認する。

スピードラビットで、数は十八匹。

俺が単独で前衛やってた前回なら前で止めきれなかったような数の相手だ。

まあ今回も、先に数は減らさせてもらうけど。


「それじゃ初手は貰うね。そのあとはソフィーとメラさんよろしく」

「はーい」


一同の返事を聞いて、俺は指を鳴らす。


「 【爆炎】 」


唱えて発生させた火球を飛ばすと、着弾と同時に爆発。

威力はランク4魔術師の術と同じくらいかな。

範囲攻撃担っているそれは、群れの中心に落ちて、半分くらいを吹き飛ばしていた。


そして残りの半分は、こちらを向いて走ってくる。

そのうちの二匹ずつ合計四匹をソフィーの矢と、メラさんの魔術で飛ばした氷の槍が貫く。

これであと五匹。


「ササラさん、そっち二匹よろしく」

「わかりました!」


しっかりとした返事を聞いて前に出て、スピードラビットのまず二匹をまとめて盾で弾き返す。

さらに横を通り過ぎようとしていた一匹を、盾の横スイングで思いっきり打ち返して弾き飛ばす。

盛大に打ち上がったあところがったそれらは、やっぱりソフィーとメラさんに串刺しにされた。


そんな様子を確認しつつ、ササラさんの方を見るとスピードラビットの一匹目は既に仕留めて丁度二匹目を切り落とす所。

うん、これにて戦闘終了。


「みんなお疲れ様。サクサクだったね」

「ユーリさんのおかげですよ」


なんてみんな年長者を持ち上げてくれるええ子たちや。


「それじゃあみんなで剥ぎ取りして次に行こうか」

「はーい」


こんな良い子たちには、沢山稼がせてあげないと。(使命感)




とはいえ獲物を探すには歩かないといけないので、そのあいだはみんなと話して親睦を深めることにする。


「ササラさん、いつも前衛一人じゃ大変でしょ」


最初は槍使いのササラさん。

短く切り揃えられた髪がトレードマークの女の子だ。


「みんながんばってくれるからそうでもないですよー。でもユーリさんがいるといつもより無茶出来るからいいですね」

「俺もササラさんみたいな優秀な前衛が隣にいてくれると楽でいいよ」


「やだもー、そんなに褒めてもなにも出ませんよ」

「本心だってー」


なんてイチャついてると、なにかに気付いた顔をした彼女に肩をつつかれる。


「ユーリさん、ソフィーが嫉妬してますよ」


言われてチラッと確認すると、確かにソフィーはなにか言いたそうな顔でこちらを見ている。


「あれ嫉妬かな?」


そもそも嫉妬される理由がなくない?


「まあでも、面白いからもうちょっとあのままにしとこうか」

「あー、ユーリさんひどーい」

「いやいや、俺ほど優しい男は他にいないよ?」

「またまたー」


なんて話をしていると、後ろから声をかけられる。


「二人とも、なに話してるんですか?」

「なんでもないよー」


流石に本人に本人の話をしていたとは言えない。


「むぅー」


むくれてるソフィーもかわいいなあ。


「そうだ、ユーリさん。あたしのことはササラでいいですよ」

「なら俺のこともユーリでいいよ」

「いや、流石にそれはちょっと……」


まさかの真顔でお断り。

ちょっと調子に乗りすぎたかな。




なんて話をしながらも魔物を見つけたら効率的に狩って、また移動を再開する。

そんな中で今度は魔術師のメラさんに話しかけられた。

彼女は小柄で、目が隠れるくらいに前髪を伸ばしているので若干表情を読みづらかったりする。


「ユーリさん」

「どうしたの、メラさん」

「術、凄い」

「ありがと。まあランクでいうと自慢するほどの威力じゃないけどね」


俺の冒険者ランクは6だけど、使ってる術の威力はだいたいランク4くらいの魔術師が使うそれと同等かそれ以下だ。


「それにそもそも魔術師とは原理が違うから」

「どう違う?」

「魔術は術式を組んで魔力を流して術を使うでしょ? 呪言は言葉に魔力を流して現象を起こしてるからプロセスが異なるんだよね」


「興味深い」

「そうかな?」

「私も使ってみたい」

「それはちょっと難しいんじゃないかな」

「残念」


言葉短にそんなことを言う彼女は前髪で目が隠れているのも相まって表情を読みづらいけど、残念がっているのは本当みたい。


「また見せてほしい」

「機会があれば何度でも」

「期待してる」


なんて会話が途切れると、また少しして服の裾をくいくいと引かれた。


「呼び方、メラでいい」

「じゃあ俺もユーリでいいよ」

「それはだめ。理屈が通らない」

「理屈?」

「私のクランのマスターと同格の相手を呼び捨てにするのは失礼」


まあたしかに。


「じゃあ俺もメラちゃんで」

「……!」

「嫌だった?」

「驚いた。異性にそう呼ばれたのは生まれて初めて。でも嫌じゃない」


「ならよかった。よろしくね、メラちゃん」

「……!」


なにこの子面白い。




そして次はナスターシャさん。

彼女は長い髪を背中に流していて、表情は柔和で優しい雰囲気が溢れている。

男にモテそう、治癒師だし。


「ユーリさん」

「ナスターシャさん。暇じゃないですか?」


俺が入ったせいで格下狩りの様相を呈しているせいで、怪我人が全然出ないために治癒師の彼女はさほどやることがない状態だったりする。


「手は空いてますけど、忙しいよりはいいですから」

「たしかにそれはそうですね」


怪我人なんて出ないに越したことはないというのも本当のことだ。

なら治癒師なんていらないじゃん、なんて言い出すパーティーから帰らぬ冒険者になっていくんだけど。

命大事に。


「それでユーリさんは、ソフィーさんのことが好きなんですか?」

「急に来たね」

「気になったので」

「まあいいけど。ノーコメントで」


「秘密なんですか?」

「もし本当に好きだった言ったら、このあと困っちゃうでしょ?」

「私は構いませんよ? たぶんみんなも」


「じゃあテントの中でイチャつき始めてもいい?」

「構いませんよ、こっそり覗き見させてもらうので」

「それは俺が構うよっ」


絶対恥ずかしいじゃん。


「なんてまあ冗談だけど」


どっちにしろ、ここで答える質問でもないでしょ。


「そうだ、俺のことはユーリでいいよ」

「じゃあ私のこともナスターシャでいいですよ」

「わかった、ナスターシャ」

「はい、ユーリさん」


騙された!?




そして最後に、ソフィーが歩きながら近くまで来る。


「ユーリさん」

「どうしたの、ソフィー」

「みんなと仲良さそうですね」

「そりゃあ同じパーティーだからね、コミュニケーションは円滑にしておかないと」


即席だから別にいいだろとそこを怠ると、いざという時に困ったりする。

まあ別に絶対に必須って項目でもないんだけど。


「本当に、それだけですか?」

「ソレダケダヨ」


やましい気持ちなんて全くナイヨ。

まあ若い子と話して楽しいのは本当のことだけど。


「じー」

「そんなことよりソフィー、今日の晩ごはんは良いお肉を用意してきたから楽しみにしてていいよ」

「本当ですか!?」


凄い嬉しそう。

尻尾もブンブンしてるし、本当に凄い嬉しそうだ。


「それじゃ、夕ご飯までもうちょっと頑張ろうね」

「はい!」


ということで、機嫌をなおしたソフィーと一緒にもうひと頑張りすることにする。


あと食後のデザートと、お風呂もあるよ。

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