四十四話 影が蠢く
「理事長、どう責任を取って貰うつもりだ?」
「……そもそも、黒城暗翔と
一つのテーブルを囲む集団一向。【レグルス女学院】――地下の大聖堂にて、彼らは会合を行っていた。
【
「机上の空論を投げかけたところで、説得力は皆無であろう。だが、大いなる収穫もあったのは事実」
緑のフードコートを羽織っている男が、荒く鼻息を鳴らした。彼がリーダー格らしく、皆の視線が一点に集まった。
「始祖の
「そうか! これは一大事であるなッ」
「一ヶ月前、
「理事長であるボクの働きも認めて欲しいですけどネ、コードC」
「貴様の処分は取り置きだ」
「あの
コードCと呼ばれた男は、緑のフード端に手を当てる。本題だ、と付け加えた。
室内の緊張の高まりが、ロウソクの灯火に波動して揺れた。
「ランク争奪戦時に行動を起こす。恐らく、奴らもこちらの情報を処分するために動くはずだ。そこを逆に叩く」
「だけど、肝心の
「確かに。通常、
しばしの間、談笑声が辺りに咲く。
どうやって殺害し、
時期を見計らったかのように、コードCは指を鳴らす。ぐらり、と火元が震える。
「案ずるな。既に考え済みだ」
「まさか、
「そんな
机に肘を置いたコードCは、全員の顔を一回り見渡す。結論を急がない。余裕でもあるかのような振る舞いだ。
「夜雪という少女は黒城暗翔の
「というと?」
「黒城暗翔は【ヴラーク】を――」
コードCが、ニッと不気味なほどに唇の端を吊り上げる。
驚愕の声が、神殿内に響き渡った。
「決戦はランク争奪戦時に。我々が望む世界を手に入れるのだ。そのために――黒城暗翔を抹殺する」
■□■□
暗翔が玄関の扉を開けると、無境なく周囲を燃やしている紅舞の姿が目に入った。
手を掲げると、生成された無数の火の玉が夜雪に向かって飛来。涼しげな顔をしながら
「紅舞、これは一体どうした――あぁ、貧乳いじりでもされたのか?」
「されてないわよ、馬鹿ッ」
頬を赤らめた紅舞が、暗翔に向かって火球を飛ばして来た。野球ボールのような速度と直線的な曲線で接近した火球だったが、腕の甲であしらわれると、呆気なくアスファルトに打ち消えた。
【
「いい加減辞めろよ。ほら、夜雪からも言ってくれ」
「言ったところで、紅舞さんは聞く耳を持ちませんわ。わたくしが怒らせた原因でして」
「だろうな。それで? 具体的になにをしたんだ?」
「わたくしは紅舞さんに、夜這いの仕方を教えただけなのですが――」
「うるさいッ! 聞いてもないことを勝手に言ってきて……この変態兄弟ッ」
俺は関係ないだろう、というツッコミは舞い上がる火の粉とともに、風に巻かれてしまう。
火球が電線に肉薄。瞬間、爆撃音とともに、辺りの電灯から明かりが一切に消えてしまう。
これ以上は面倒ごとを引き起こすと考えた暗翔は、即座に駆け出していた。紅舞の前に飛び込むと、灼熱の温度で髪の毛が焦げる臭いが鼻に侵入してくる。胸元を掴み手繰り寄せると、小さく呟く。
「ごめんな、紅舞。責任は俺が取る」
「えっ……?」
不意を突かれたかのような声が、紅舞から漏れる。
「に、兄様っ!?」
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