第六話 手のひら

 私は気づけば泣いていた。


「あ、あかねさん、、?」


「うん。どうしたの?」


なんで拒絶しなかったのか分からない、あかねさんといると、どんどん自分が分からなくなっていく。


「な、なんで、、?」


 気づけばポロッと疑問を口にしていた。

そんな私に優しい声色でハグを解き、向き合った状態でこう言ってきた。


「私の憶測だけど、真崎に触られていた間小羽は、〝逃げられるけど逃げない″、〝断われるけど断らない″そう自分に言い聞かせて、嫌なことも全部受け入れてしまうダメな人間って思ってきたんじゃないかなって。そして、それをどう突破させればいいかずっと考えていたの。そんな時、玄関の件で気づいたの」


「玄関の時、、?」


「そう。この子は触られた時に感じる愛を知らないんだなって。あの時も拒絶はしなかったけど、ビクビクしてたでしょ?」


その時ハッとしてしまった。ずっと蓋をしていた事、ずっと気のせいで誤魔化していたことを。



知りたくない。気づきたくない。


触り、触られて感じる愛なんて。


思い出したくない。兄に触られてる日々を。



私がフルフル震えているともう一度体を寄せこう言った。


「こんな事思い出させてごめんね、風邪引いてる人の弱みにつけ込むような形になっちゃって、けど、これだけはっきりさせておきたかったから。」



あかねさんは、ポロポロと泣いている私を優しく横にさせ、頭を撫でながらつぶやいた。


もうあかりさんに対しての拒絶反応は出なかった。


「あなたにかかった呪いを解いてあげるから」


何か言ってくれてたのだろうが、暖かい手の温もりしか覚えていない。

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