いっそレンタル彼女。＊俺の彼女になってくれませんか？＊

最終話：僕の彼女になって。

「瑠衣って名前、実は本名じゃないの」

「・・・うん、まあそうじゃないかとは思ってたけど・・・」

「プライバシーの問題があるから普通は本名は出さないもんね」

「レンタルなんてお仕事してるからね・・・源氏名って言うかお店専用の名前で

出てたの・・・」

「まあ、個人情報を守る為よくある話だから驚きはしないけど・・・」

「じゃ〜・・・」

「私の本名は「郁奈良 茲音（いくなら ここね）」

「いくなら・・・ここね？」

「それが君の本当の名前？・・・瑠衣ちゃんで慣れてるから・・・ちょっと

違和感あるかも・・・」

「これからは茲音（ここね）って呼んで、福ちゃん」

「これからって？」

「私は今日、プライベートで来てるの・・・」

「だから何時間いても料金は発生しないから・・・」

「それは？レンタル彼女を辞めたから？」

「そう・・・私ね・・・レンタル彼女続けてるのが辛くなっちゃって」

「なにか嫌なことがあったの？」

「そうじゃなくて私、実は福ちゃんと、さよならしてから、福ちゃんの

ことが忘れられなくなっちゃって・・・」

「福ちゃんのこと本気で愛しちゃったみたい」

「だから、他のお客様のところで彼女さんしてることが辛くて・・・」

「本当に好きな人がいるのに、私、なにやってるんだろうって思っちゃって」

「もう偽物の「彼女」なんてしてられなくなったの」

「え？・・・今、どさくさに紛れて、何か言ったよね」

「僕のことが？忘れられなくなったとか？、本気で愛しちゃったとか？」

「そうだね・・・言ったね、私」

「まじで？・・・それまじで？・・・ウソじゃないよね」

「僕はさ、君と別れて君に会えないまま片想いのまま、ずっと苦しみ続ける

のかと思ってたんだ・・・」

「ごめんね、福ちゃん・・・私だって早く福ちゃんに会いたかったんだよ」

「すぐに連絡しようと思ったんだけど」

「私だって少しは考える時間、必要だったし・・・」

「いいんだ・・・君の気持ちが聞けただけで悲しみも苦しみもなにもかも

全部吹っ飛んじゃったよ」

「体から悪いものが全部抜けてくようだよ」

「ありがとう・・・神様・・・ありがとう、る・・・・茲音（ここね）ちゃん」

「そうだ、僕たち同じ大学に通ってたんだよね」

「もし僕が酔っ払って君のレンタル彼女をポチッとしてなかったら、ずっと会えなかったのかもしれない」

「同じ大学の中にいても知らないまま卒業してたかもしれない・・・」

「だから〜、今となったら福ちゃんが酔っ払ったことは正解だったんだよ」

「これからは好きな日の好きな時間に会えるよ、福ちゃん」

「そうだね・・・僕も破産しなくて済むしね・・・」

僕は久しぶりに本気で笑った気がした。

で、今度はまじな意味でふたりは写真部サークルのみんなに会いに行った。

僕は恥ずかしいことをやってしまったその汚点を払拭するために本名になった

茲音（ここね）ちゃんを連れて行った。

「あの時はごめんなさい・・・改めて、私、郁奈良 茲音（いくなら ここね）です」

「まだレンタル彼女ってことはないよね」

礼二が皮肉った。

「福志・・・よかったじゃないか、五年間彼女いない歴に終止符だな」

そう言ったのは登だった。

桜ちゃんは僕を自分のところに引き寄せて耳元で茲音ちゃんに聞こえない

よう言った。

「もし茲音ちゃんにフラれたら言って・・・私が面倒みてあげるから・・・」

「あはは・・・縁起でもない・・・でもまあその時はよろしく・・・」

とりあえず僕の面子は保たれて、みんなにも受け入れてもらえた。

僕と茲音（ここね）ちゃんは安心して部室を後にした。

部室を出ると外は雪がちらほら・・・。

「福ちゃん、雪降ってる」

「ほんとだ・・・・そう言やもうすぐクリスマスだね」

「そんなことも忘れてた・・・」

「去年のクリスマスは一人寂しく迎えたけど、今年は暖かくなりそう」

「一緒にクリスマスすごそうね福ちゃん」

「そうだ・・・その前に肝心なこと君に言うの忘れてる？」

「肝心なこと？」

「そう・・・肝心なこと」

「言うよ、いい？」

「どうぞ・・・」

「郁奈良 茲音（いくなら ここね）さん・・・改めて僕の彼女になって

くれませんか？」

「なにそれ？・・・プロポーズみたいだけど・・・」

「うん・・・そう取ってくれてもいいけど・・・プロポーズの前倒し的な？」

「福ちゃんって面白いね・・・好きだよそういうとこ」

「で？どうなの？返事は？」

「はいっ！！末長〜く、よろしくお願いします、ふつつかな彼女ですけど」

「私は福ちゃんだけのレンタル抜きの彼女だからね・・・」

おしまい。