第6話:訪ねて来た瑠衣。
僕は桜ちゃんから告白されてサークル活動で部室で会うとどうしても意識して
しまうようになった。
まあ、それでもお互いを避けるとかそう言うこともなく普通に友達として
接していた。
(もしかしたら僕の彼女になってくれたかもしれない桜ちゃん)
(まじで、ごめん・・・僕が優柔不断だから・・・)
もう
僕の想いをさらに募らせた。
もう一度レンタル彼女代行サービスのサイトを覗いてみようか。
僕は恐る恐るユートピアのホームページを開いてみた。
そしたらホームページは閉鎖されていて《このサイトは一身上の都合により
閉鎖しました、ご利用くださったお客様には申し訳ありませんが、なにとぞ
ご理解くださいませ》
その文章は僕にショックということ以外なにも与えてくれなかった。
もう、いないんだ瑠衣ちゃんは・・・僕は焦った。
なんでだよ・・・なにがあったんだよ。
これでもう永遠に瑠衣ちゃんとは縁が切れた。
連絡も取れなし・・・会うことさえできなくなった。
あとは大学中探して回るしかないのかな・・・。
僕は絨毯の上にしゃがみ込んで力なくため息をついた。
「壊れそうだよ、瑠衣・・・ 」
今でも君を想ってる・・・放っておけない・・・今すぐ逢いたい。
笑顔が見たい・・・君のその声が聞きたい。
僕はエンドマークも見ないまま君を失うのか?
もっと君と一緒にいられたら、こんなに悲しまなくて済むのに・・・。
君といたい・・・君を思い切りこの腕に抱き絞めたい
・・・瑠衣・・・。
僕は、あまりに気持ちが落ち込んでなにも手につかなくなった。
そんなテンションがただ下りの、大学が休みのある日。
誰かが玄関のチャイムを鳴らして僕のアパートを訪ねて来た人がいた。
僕は友人か宅配便かと思って事務的に玄関ドアを開けた。
開いたドアの向こうにいた人物を見た僕はびっくりして、玄関の上がり端に
腰を抜かしそうになった。
そこに立ていたのは「
「え?・・・る、瑠衣ちゃん?」
「おはよう、福ちゃん・・・」
「僕、呼んでないけど・・・って言うか、瑠衣ちゃん、ユートピア閉鎖されてたけど・・・もしかして辞めた?レンタル彼女」
「うん・・・辞めちゃったの」
「そうなんだ・・・で、その報告にわざわざ来てくれたの?」
「そうじゃなくて、それならLINEにメッセ送ればいいでしょ?」
「今日は別のお話で来たの」
「別の話?・・・別の話って・・・なに?」
「どこかに行っちゃうの・・・引っ越しちゃうとか?」
僕は瑠衣ちゃんが自分の知らない場所に行っちゃうんじゃないかって
パニクりそうになった。
「はやとちりだよ、福ちゃん」
「って言うか、自分の彼女をずっと玄関に立たせとくつもり?」
「あ、気がつかなくてごめん・・・上がって?」
彼女は僕にいざなわれるままソファに座った。
「長く来てなかった訳じゃないのにちょっとだけ懐かしいかな、この部屋・・・」
瑠衣ちゃんがソファに座っただけで部屋の雰囲気が優しくほんわかな空気感に
変わった。
「あの、ユートピアがなくなってたから焦っちゃったよ」
「どうしようかと思っちゃった・・・絶望感ハンパなかったし・・・」
「ごめんね、深いわけがあって」
「深いわけって?」
「その前に先にひとつ聞いて欲しいの?」
「なに?」
「瑠衣って名前、実は本名じゃないの」
「・・・うん、まあそうじゃないかとは思ってたけど・・・」
「プライバシーの問題があるから普通は本名は出さないもんね」
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます