寝ぼけまなこ

天川裕司

寝ぼけまなこ

タイトル:寝ぼけまなこ


私は昼寝をしていた。

私が住んでるのは簡易パート。1人暮らし。

本当に寝てた時、泥棒が入っていた。


ここに住んでるのが女の私1人だからと、

泥棒は安心して入ってきていたのか。


恐怖の絶頂。

私は身動き1つできず、ずっと寝たふりを決め込んだ。

ここで起きれば確実にやられる。

男の手には刃物が握られていた。


でも男もできることなら殺人はなさず、

盗むべき物だけ取って家主が気づかぬうちに

このまま退散しようと考えたのか。


私が寝てるのを確認しつつ、ガサゴトと、

なるべく音を立てないように物色していたようだ。


私はずっと寝たふりを決め込み続ける。

刃物を見てさらに恐怖が高まった。

ここで起きちゃ絶対にいけない!


出来ることなら金目の物だけを盗(と)らせて、

早くこの泥棒をこの家から退散させたい。

そしてそれから警察へ通報だ。


ここまでを瞬時に想定し、

さらにいつものように寝ている時の自分を思い出し、

本当に気づかず、普通に寝てる自分を演じ続けた。

私は学生の時、

少しだけ演劇部に入っていた事があったから、

その時の経験が少し生きてくれたのかもしれない。


やがて泥棒は私を起こさず、

盗るべき物を盗れたと納得したのか、

この部屋から出て行くそぶりを見せ始めていた。


「やっと…出てってくれる。見てろよ、絶対警察に捕まえてもらうから…」

私は心の中でそう2、3度繰り返し、

ちょっと薄目を開けて泥棒のほうを見た。


ヤツは背中を見せて部屋から出ようとしていた。

その手に握られた刃物を見ると、

少し赤色が付着していたように見えた。


それから以降、

私は部屋から出ることが出来なくなっていた。

ただあの泥棒が憎い、…泥棒が憎い。

警察なんかもうどうでも良い。

この世から泥棒を抹殺することだけに

私の存在を懸けることにしたのだ。


私は部屋から出る事ができない。

ただ被害者はかわいそう。

あの時の私と同じ立場に立つ人たちだから。


その被害者を守るため、

私は部屋を転々と変える事ができて居たようだ。

泥棒を、その部屋の中で葬るために。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=tMjuH0gRZSI

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寝ぼけまなこ 天川裕司 @tenkawayuji

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