12月23日 銀の鈴
街のあちこちで、祝祭のための飾り付けの痕跡を見つけることができます。この星の形をした銀の鈴もそのひとつです。
揺らすと、星が降るような繊細で綺麗な音がします。無数に転がっていますから、ひとつくらいお土産に持って帰ってもかまわないでしょう。
ただ、誰かに贈りたいなら、その相手は慎重に選んでくださいね。失われた地に関する知識は神の言語と違って禁忌とまでは言いませんが、あまり大っぴらに語るものでもないのです。大事な人にこっそり秘密の贈り物をするくらいなら、無理には止めませんが。
こういう話をすると誤解されがちですが、塔の編者たちは一般人が知識を学ぶことに制限をかけるような存在ではありません。ただこの「失われた地」というのは、かつて神によって隠された区域です。知識そのものの危険度や重要度というよりは宗教的な意味合いで、みだりに口に出すべきでないとされているのかもしれません。
〈プレイヤー〉や〈エリア〉といった神の言語についても同様の考察ができます。この言葉を市井の人間が学ぶことそのものに問題があるのではなく、かつて神がいた時代には隠されていた言語であった、つまり〈エリア〉ではなく「区域」と、〈テイマー〉ではなく「調教師」と呼ぶよう定められていた痕跡があちこちの遺跡で見られるからこそ、この言語は塔の外へ持ち出してはならないのです。
宗教も文化も価値観も時代と共に変化してゆくものですから、いずれはこのイレアでも自由に誰もが神の言語を学ぶ日が来るのかもしれません。ただ、それを決めるのは塔の編者達であり、この世界の住人達です。我々は決してそれを乱さぬように観光しなければなりません。郷に入っては郷に従え、ということですね。
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