12月11日 銀の短剣
ああ、気づいてしまいましたか。そうです、「最強の武器」と殴り書きしてあるそれが、その店の看板です。気になりますか? そうでしょうね。
「……いらっしゃい」
渋い声を出そうとして最初の方ちょっと裏返ったあの人が、この店の店主です。最強かどうかは知りませんが、腕のいい鍛冶屋ではあります。
ええ、ご覧の通り、品揃えの半分くらいは包丁や薪割り用の斧、枝打ち用の鉈なんかですね。武器を使う人間なんて集落の一割にも満たないですから、商売としてはこれが普通でしょう。変なのは看板の方です。
「調理器具として使えば、調理器具だわなぁ。そりゃそうか……」
意味深なことを言っていますが、特に気にしなくて大丈夫です。
さて、武器はやめておきなさいと言いたいところですが、野営に近い食事をしている集落なんかにも行く予定がありますから、ナイフの一本くらい持っておいてもいいかもしれません。そのあたりのコーナーからひとつ選んではどうでしょう。軽くて使い勝手のいいものを──ああ、いいと思いますよ。
「……一目で霊銀を選ぶたあ、お客さん、なかなか見る目があるな」
この店ではともかく、一般的には「軽銀」と呼ばれる銀の合金です。錆びにくく非常に軽量で切れ味もいい。デザインは少々無骨ですが、鎚目が整っていて美しいですね。
少々高価ですが、素材と品質を踏まえれば価格はかなり良心的です。いいものなので、もしご自分で研ぐなら、そこそこいい砥石を三種類以上揃えることをおすすめしますよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。