12月3日 探索者登録証風腕輪


 ちょっと待ちなさい。煙玉なんて買ってどうするんです? 使うつもりはない? でも面白いから? 戻してきなさい。それは水気で発煙するタイプのやつです。管理を誤ると湿気を吸って家の中で破裂しますよ。しかも催涙性のやつじゃないですか。戻しなさい。


 ほら、面白いものなら他にもたくさんあるでしょう。違います。癇癪玉ではありません。投げナイフもダメです。武器の類から離れなさい。


 ほら、これなんかどうですか? ドッグタグじゃありません。まあ、似たようなものではありますが。


 銀細工に翡翠色の七宝で回路が描かれたこれは、塔が発行している探索者の登録証、に似せて作ったアクセサリーです。ちなみに本物は七宝焼きではなく光石が象嵌されていますが、偽造防止のため同じ素材で作ることは禁止されています。つまり本物は発光するので、探索者達は首から下げたりせずに厚手の革袋に仕舞っていることがほとんどです。夜間に光が見えると危険なことも多いので。


 とはいえ、土産もののこれを革袋に仕舞い込んで持ち歩きたい方は少数派なので、大抵はこうして首飾りや腕輪、髪紐なんかにアレンジしてあります。私のおすすめはこの革の腕輪ですね。やわらかくて肌触りのいい鹿ロクのなめし革を使っていて、編み模様も綺麗です。おそらく花園区域の職人が作ったんでしょう。あそこは織物なんかもいいのがたくさんありまして、この街を出たらそちらに向かいますので、楽しみにしておいてくださいね。

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