過去



 ──ぼろぼろに疲れ果てた勇者がさいごに足を運んだのは、凍てつく雪原。



 なんにもない果ての地でした。


 誰も近寄らない、さみしい土地でした。


 彼はそこを終の棲家に決めました。


 そこだけが誰にも利用されない安息の地でした。


 どこにも帰れない勇者を哀れに思った神様は、彼に恩恵を与えました。



 わたしはおまえの傷を癒やしたい。

 おまえが乾いてしまったというのなら、

 いくらでも、喉を潤す水を与えよう。

 地には豊かな穀物が実る土を与えよう。

 あたたかな光を注いであげよう。

 おまえとその末裔が健やかである限り、そこに恵みを与えよう。



 約束は永劫に守られる。



 だから、


 だから許しておくれ。



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