朝七時に私は笠井丼を作った
隅田 天美
朝七時に私は笠井丼を作った(BGM ジプシーキングスのインスピレーション)
『いつの世にも悪は絶えない。
その頃、徳川幕府は火付盗賊改方という特別警察を設けていた。
凶悪な賊の群れを容赦なく取り締まる為である。
独自の機動性を与えられた、この火付盗賊改方の長官こそ長谷川平蔵。
人呼んで────「鬼の平蔵」である』
名作時代劇「鬼平犯科帳」のオープニングナレーション(専門用語では「アバン」という)である。
で、作品は一気に現代に変わる。
その警察(日本のどこかにある城西署)に食べ物のうんちくや情報に詳しい立花がいる。
風体の上がらない食べ物好きのオッサンなのだが「めしばな刑事タチバナ」の主人公である。
でも、私が今回取り上げるのは、その同僚でベテラン刑事の
志波さんは関西出身で酒豪そうで下戸の甘いもの大好き(辛いものも大好き)な既婚者だ。
初期は「モブ」扱いだったが関西圏にかかわる饂飩や大好きなアイスの話などで立花をフォローしたり、逆に煽ったりする。
(どうでもいい話。今書いている私はアイスではバニラ好きです。ガリガリ君ではソーダ味かコーラ味が鉄板)
その志波さんがメインの話がある。
会社の金を横領した犯人に対して志波さんが笠井丼の話をする。
彼の言葉からだと、関西圏、特に大阪などで古くからやっている蕎麦屋などではおいてあるローカルな丼である。
丼には本来、肉や魚などがメインを張る。
葱と油揚げなんてサブキャラもいいところである。
卵もカツや鶏肉と合わせられるが、どちらかと言えばサブである。
つまり、主人公が誰もいない。
でも、中高年になると、その笠井丼の滋味が良いのだという。
ご飯は炊いてある。
小さいフライパンにだしの素と油揚げ(味付けしたもの)、小葱(冷凍)を煮て卵でとじる。
それをどんぶり飯に乗せる。
志波さんが言っていたように確かにコスパがいい。
でも、なんか、ほっとする。
「君は君でいい。間違っていい。怖がらないで」
かの映画『ハイキュー ゴミ捨て場の決戦』のテーマ曲『オレンジ』のような滋味である。
派手なアクションも、思案を巡らす推理があるわけでもない。
とびぬけた派手さもない。
しかし、かつての時代劇は仕事の喜びや人との繋がりの大切さを説いていた。
『悪は悪であるが、それだけで責めてはいけない』
理想形の主役が十人いても面白くない。
でも、脇役が十人もいれば面白い話が書ける。
志波さんのダンディズム、大変美味しかったです。
朝七時に私は笠井丼を作った 隅田 天美 @sumida-amami
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