第29話 良いんですよ、外しても

 薄暗い教会の懺悔室。扉の隙間から見える教会のステンドグラスに満月が差し込み幻想的な雰囲気を醸し出す。

 俺は冷たい両の手をこすり合わせながら穂乃果さんを待つ。息が白い。最近めっきりと冷え込んできた。

 朝まで付き合うなら、もっと温かい恰好をしておくべきだったかなと後悔しながら穂乃果さんを待っていると、12時少し前に教会の扉が開くギィという音が聞こえて来た。

 とことこと言う足音が近づいて来て、懺悔室の扉を開いて穂乃果さんが中に入ってくる。

 懺悔室の


「……へ?」


 狭い懺悔室の個室。二人並んで座れるスペースなどない。


「今日は、寒いですから」


 穂乃果さんはそう言うと、呆然としている俺の膝の上に、俺と向かい合う様に座った。幸い、暗い懺悔室の中であるため、穂乃果さんの顔はほとんど見えない。穂乃果さんからも俺の顔は見えないだろう。


「ホ、穂乃果サーン? アノ、ドウシテ……」


「ですから、今日は寒いので」


 穂乃果さんも厚着をしているのだろう。ボアフリースの服を着ている様でもこもこしている。


「こうしていれば、寒くないです」


 俺の膝の上に座り、もこもこのままギュッと抱き着いて来た。もこもこ越しなのに、二つのお山が潰れる感触が分かる。


「アノ……」


「嫌、ですか?」


 嫌なわけが無いだろコンチクショー! と叫びたい気持ちをぐっと抑える。


「イヤデーハ、ナイデース」


「ふふ、なら、今日はこのままで。ねぇ、ソンさん」


 耳元に穂乃果さんの吐息がかかりゾクゾクする。


「……ウォーフェイチャンアイタツヤ」


 耳元でささやかれた流暢な中国語っぽい言葉。ソンさんと言う中国人のふりをしているが、残念ながら俺には中国語が分からない。もしかしたらソンさんが中国人でない事ことに勘づいて、穂乃果さんがカマをかけてきたのかもしれない。


「日本語デ、ダイジョブデース」


「クスクス。今日は朝までよろしくお願いしますね、ソンさん」


「モチロンデース。達哉カラ、キイテイマース」


「ふふふ、ありがとうございます」


 穂乃果さんはしばらく俺を抱きしめた後、もぞもぞと俺の服をまさぐり始めた。


「穂乃果サーン。手、繋ガナイデスカー?」


「今日は、寒いので……えいっ…………………………………………んぁっ♡」


「ひょっ!」


 穂乃果さんが俺の服の中に手を突っ込み、その冷たい手を背中にペタリと付けた。冷たくてビックリして、変な声が出た。


「ぁ、ぁ、ぁ、あった、かいです……♡」


「ワ、私ハツメタイデース」


「………………………………んぅ♡………………………………………………………………ソ、ソンさんも……………………………………………………どうぞ♡………………………………………………あったまって、ください♡」


 穂乃果さんは俺の腕をつかむと、裾から服の中に入れた。無駄な肉の無いすべすべしたお腹。暖かくて、滑らかで……。


「んんんんんっ♡♡♡♡♡♡♡♡…………………………どう、ですか?……あ、あたたかい、ですか?…………………………んっ♡」


「めっちゃ、暖かいです……」


 片言になるのも忘れて素で答えてしまった。


「わ、私も、身体が………………………………熱くなってきましたっ♡」


 温かくて幸せな穂乃果さんの中から手を引きぬことが出来ずに、耐え切れずにその柔肌を触ってしまう。横腹や、背中、少し浮いた肩甲骨。薄暗い懺悔室の中、お互いの表情は見えない。見えないが、穂乃果さんがどんな顔をしているのかは、その熱い吐息から大体わかった。

 その薄い背中を触っていると、指先があるものに触れる。布のような、ゴム紐のような、帯状のもの。ごくりと生唾を飲み込む。そんな俺の様子に気が付いたのか、穂乃果さんが俺の耳元で誘うように囁く。


「ねぇ、ソンさん?」


「ぁ……ナ、ナンデースカー?」


 穂乃果さんがふふふと耳元で妖艶に笑う。そして、唇が耳に触れるほどに近づいてきた。


「良いんですよ、外しても♡」


「……っ!」


 果たして、俺の理性と束縛具の、どちらが先に外れただろうか。

 その後、


「くぅ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡れ、えむぅうぅううぅ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ぶ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡りゅ、♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡れえええぇぇぇぇぇっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


 穂乃果さんのレベルは、200を超えた。

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