第25話 見えないからこそ、よりエロい
皆さんはミロのヴィーナスをご存じだろうか。紀元前に古代ギリシャで作成された彫刻の女性像である。特徴は美しい顔、素晴らしいスタイル、そして存在しない両腕である。
ミロのヴィーナスには最初から腕が無かった訳ではない。長い月日が経ち、失われたのだ。しかし、失われたからこそ、ミロのヴィーナスはより美しくなったのである。
これは人間の脳が、存在しない腕の部分に自分の理想の腕を想像するからだという。そういわれると、なるほど確かに。自分の妄想する物以上に美しいものなどこの世に無いのである。
つまり何が言いたいかと言うと。
「………………………………………………………………………………………フッ♡………………………………………………………………………………………………フーッ♡」
板の向こう側で、身体を捩っている穂乃果さんはメチャクチャにエロいと言う訳である。そう、穂乃果さんから俺の姿が見えないという事は、俺からも穂乃果さんの姿が見えないという事なのだ。
俺の右手の中指に、少しだけ触れられた穂乃果さんの指。木の格子から少しだけ見える穂乃果さんの身体。捩られる肉体に連動して動くお胸。そして我慢するような声と時折聞こえる嬌声。
見えないのに、エロい。いや、見えないからこそ、よりエロい。
あの穂乃果さんが、仕事が出来て、優しくて、明るくて、気配りの出来るやさしいお姉さんが、俺の指に触れて身を捩っているのだ。暗い懺悔室の中で。
「……………………………………………………………………………………………………………………ぁ…………………………………………だ、め♡……………………………………………………」
後悔している。俺は今とても後悔している。
なぜこんな方法をとってしまったのか。バレるならバレるで良かったじゃないか。
見たい。今の穂乃果さんがどういう状況なのか、どんな表情で悶えているのか。なんなら揉みしだきたい。
経験値上げる代わりに、少しスケベさせてもらいますね? とか軽い調子で言ってれば良かった。なんだよソンさんって。だれだよそいつ。
「……………………………………………………………………ッッッ♡」
懺悔室の向こう側でカタンと音がした後、指が離れた。
「ハァ…………ハァ…………ハァ…………ハァ…………」
穂乃果さんの荒い息遣いが聞こえる。初回だし、ここまでだろう。穂乃果さんのエロい姿を想像してしまったせいで、もうこっちが辛抱たまらんとです。
さっさと帰って一人遊戯したい。俺のセイントクロスがホーリービームを出したがっている。
「ソレデーハ、今日ハ、ココマーデデース。次回ハ、タツヤ君ト調整シテクーダサーイ」
「ぁ、ま、待ってくださいっ!」
前かがみで懺悔室を出ようとするも、穂乃果さんに引き止められてしまう。
「ドウサレマーシタカー?」
「ま、まだ出来ますっ! お願いですから、もう少しお願いします! 私、まだ耐えられます!」
「オーウ……」
耐エラレナイノーハ、私ノホウデース。
「後スコーシダーケ、デースヨー?」
「はい! ありがとうございます!」
穂乃果さんにこんなに頼まれたら、帰るわけには行かない。俺は再び手を向こう側へ通す。
「アンッ♡」
「オ、オォーウ……ソーリーデース」
「い、いえ。大丈夫です。大丈夫、です」
勢い余って触れてしまった、柔らかい肉体。服の上からでも分かるほど柔らかで重量感のある身体の部位。どこかわからない。どこ? どこに触ったの俺。なにこのエロすぎるミステリーボックス。箱の中身はなんだろな? スケベボティのおなごかな?
「い、いきますっ」
深呼吸の後に、再び穂乃果さんが俺の指に触れる。まるで指先が性感帯にでもなってしまったかのようにじんじんと痺れた。穂乃果さんの腕をつかんで引き寄せたい衝動にかられるが、何とか踏みとどまる。
「…………………………………………………………………………ん♡…………………………………………………す、ごい……………………………………………………………………♡」
俺の葛藤などどこ吹く風で、穂乃果さんがよがる。
「オーウ、ナマゴロシデース」
「…………………………………………ッッッ♡」
しばらくして、再び指が離れた。もう無理だ。早く帰りたい。早く帰って可哀想な我が息子を慰めてあげなければ。
「ソレデーハ、マタ今度デース」
「はぁ……はぁ……ま、まって、くらさい……まだ、もう少し……」
「オーウ……」
前、バーテンダーの圭さんが言ってた『穂乃果はむっつり』というのも間違いではないのかも知れない。
結局その後、追加で5回ほど穂乃果さんにねだられ、家に帰れたのは3時過ぎ。へとへとになった俺は、哀れな息子を慰める事も出来ずにベッドに倒れ込んだ。
その日は夢に穂乃果さんが出て来てきたので、めちゃックスしてやった。
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