第13話 パワーレベリング
レベルが70を超えてから、凉夏さんのレベルアップ速度は遅くなってきた。レベルが上がっていけば、当然レベルアップに必要な経験値量も増えるに決まっている。
指先をただ触れ合っているだけでは、一日に1レベルも上がらない。
まぁ、それでも凉夏さんのお母さんの余命はまだ十ヶ月はある。無理せず少しずつレベルアップしていけば間に合うだろう。
しかし、そんな楽観視をしている俺達をあざ笑うように、残酷な現実が訪れた。
夏の暑さも落ち着いてきたある日、いつもの様に凉夏さんがバイト終わりにやってきた。いつもと違う表情で。
「おかえり凉夏さん。……凉夏さん?」
凉夏さんは玄関に立ったまま、俺の目を真剣な表情で見つめてきた。据わった目だ。
「お母さんが昏睡状態に入った」
「……急だね」
「脳付近にも、石化病が転移したみたい。お医者さんが言うには、猶予は一ヶ月もないって」
「短いね」
「だから……だから今日、レベルを上げたい。一晩で、上げられるだけ。そしたら明日からダンジョンに潜る」
「耐えられる? 最悪、死んじゃうよ?」
「構わない。そうしないと、お母さんが死んじゃうんだから」
強い意志を持った瞳で、凉夏さんが言う。多分俺が何を言っても意見は変えないだろう。
「死んだら、ごめん。達哉に迷惑かけることになる。勝手なお願いだって分かってる。けど、これしか方法がない。可能性が、ない。だから、お願いします」
柄にもなく凉夏さんは真面目な顔で頭を下げて来た。
「良いって。俺だって凉夏さんのお母さんには生きてて欲しいしさ。一緒に頑張ろ」
「うん。ありがと、達哉」
凉夏さんを招き入れ、ベッドに向かい合って座る。
「経験値はさ、触れる面積に比例して移行する量も大きくなる。だから、今日は朝まで抱き合っていよう」
言いながら上着を脱ぐ。凉夏さんはどこか不満げな顔だ。
「最後までシないのかよ」
「それだと確実に死んじゃうよ。まぁ、凉夏さんが耐えられそうならシてあげてもいいけどさ」
「言ったな」
少し挑発的に笑い、凉夏さんも制服を脱いで下着姿になった。細くスラリと長い四肢が顕になる。
思わず釘付けになる俺の視線に気がついて、涼夏さんがニヤリと笑った。
「めっちゃ見てくるじゃん」
「……こういうの初めてだから。そりゃね。ちなみに経験値の移行量は俺の興奮度合いによっても増減するから、あんまり挑発しないほうが良いよ」
「望むところだよ」
凉夏さんが俺に近づいて、寄せて上げた。柔らかそうな双丘が布の中で窮屈そうに潰れる。
「それじゃ、覚悟してね」
俺は凉夏さんの肩に右手でソッと触れる。まるで吸い付くように滑らかで、細くて、なのに柔らかな肩に。首に、頬に。
すぐに涼夏さんの体が赤くほてる。正座したまま身体をくねらせる。だけど、声はあげない。
「すごいね」
「へ、平気だよ……んのくらいイぃっ♡…………ギッ♡」
強がりつつも快楽に飲み込まれないように耐える凉夏さん。追い打ちをかける様に、左手で太ももに触れる。
「っぁ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
凉夏さんの身体が一瞬クラリと傾いたが、何とか持ち直す。
「がんばるじゃん」
「……よ、よゆー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
どう見ても余裕など無いのに、なおも強がる凉夏さん。ちょっと尊敬する。
「レベルはどう? あがってる?」
「はちじゅ…………さんっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡……ぐ、ぎぃ……♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「上がってはいるね」
上がってはいるが、明日の朝までに百を超えるペースでは無さそうだ。凉夏さんのお母さんの容態は芳しくないようだし、凉夏さんは無茶をしてでもダンジョンに潜るだろう。
となると、レベルは余裕をもって150くらいは欲しい。凉夏さんはまともな装備ももって無さそうだから、生身でも100階層が平気なくらいには。
「凉夏さん、覚悟してね」
「なに……を……」
快楽に耐えているだろう涼夏さんの身体をグイと引き寄せる。そしてそのまま抱きしめた。暖かで柔らかな身体が、俺の腕の中に収まる。フワリと髪から香る甘い匂いに、肌のミルクのような匂いが混ざる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
腕の中でビクンビクンと跳ねる暑い体。
「凉夏さん、どう?」
「っ……………………………………………………………………………ヅアッ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「凉夏さん?」
「……………………………………………………………………………………………………きゅ、じゅ………………………………………………………………………に♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「上がったね」
良いペースだ。あとは凉夏さんが耐えてくれれば良い。俺にはそれがどんな快楽で、どんな地獄かを知るよしは無いけれど。大切な母の為なら凉夏さんは耐えきるだろう。
しばらくそうしていると、凉夏さんが見をよじったので少し身体を離し、その顔を見る。
「大丈夫?」
「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡♡♡♡♡♡、ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡♡♡♡♡♡」
俺の首に手を回し、俺の膝の上に座り、蕩けきった瞳で見つめてくる。あのかっこいいギャルの凉夏さんが。
「凉夏さん、一回やめる?」
「……やへなひ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡……んあっ」
凉夏さんはそのまま顔を近づけてきて、俺の唇に、その唇を押し当てた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「ふふかはん!?」
突然のことに頭が真っ白になった。唇の表面が触れ合っているだけなのに、身体が熱い。
離れようとするも、凉夏さんの腕にホールドされて動けない。レベルアップした女性に男性が勝てるはずがないのだ。
一時間ほど、そうしていただろうか。
汗だくになった凉夏さんが、とうとう意識を手放した。
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