第12話 とてもじゃないがおセッセどころではない
うますぎるフィレ肉のロッシーニ風とトラフグのカルパッチョを食べ、皿についたソースをパンで拭いて1滴も残さずに食事を終えた後、俺と凉夏さんはしばらく放心状態だった。
意外なことに食べ終えてしまった事に対する喪失感は無く、ただただ満足感と多幸感で満たされていた。
「……普通に食べちゃったけどさ。さっきの、もしかしなくてもダンジョン食材だよね?」
5分ほど放心した後、凉夏さんが手を握ったり開いたりしながら問う。
「うん。よく分かったね。まぁあれだけ美味しければ分かるか」
「味もそうなんだけど、明らかに力が漲ってるんだよ」
「力が漲る? どういうこと?」
体に力を入れてみるも、特に変わったところはない。
「あー、男の人はわからないかも。ダンジョン食材ってさ、特別な効果があるんだよ。簡単に言うとゲームに出てくる料理みたいな感じ。3分間攻撃力アップ、みたいな。多分レベルの概念がある女性にしか効果はないみたい」
「へー、そんなのあるんだ。ちなみに今日食べたのはどんな感じなの? たしかブラックミノタウロスのフィレ肉とキングダックのフォアグラ、ダンジョントラフグは70階層で捕れたって言ってたよ」
「庶民じゃ手が出せそうにないラインナップじゃん……」
凉夏さんはスマートフォンで何かを調べ始める。食材と特殊効果の一覧が記載されたサイトでもあるのだろう。
「ブラックミノタウロスの肉は攻撃力と防御力アップ、フォアグラはスタミナアップ、トラフグは状態異常無効。効果はどれも2時間程度らしい。高級食材だけあって効果もパないね」
「何だかダンジョンに潜らないの、勿体無い気がするなぁ」
「確かに勿体無いな……。だったら、有効活用しなきゃだね」
「有効活用? 今からダンジョンにでも行くの?」
「そうじゃなくて」
ドンと、肩に衝撃を受ける。気がついたときには仰向けにされ、凉夏さんにマウントを取られていた。
「防御力とスタミナがアップしてるなら、経験値貰うときの快感にも強くなってるっしょ、多分」
凉夏さんはどこか熱っぽい視線で俺を見下す。もう俺のことは獲物にしか見えていないのだろう。
「……性欲アップの効果もあったりしません?」
「へぇ、よく分かったね。フォアグラにあったよ、性欲アップ」
あるんかい。
「達哉……覚悟しろよ?」
「お、お手柔らかにお願いします……」
どうせ力で勝てるわけが無いのだ。俺は諦めて体の力を抜いた。
◇
「ふーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡…………ふーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
涼夏さんが俺の上に跨ったまま、耐えるように歯を食いしばっている。その瞳は涙で潤み、時折焦点がブレている。必死に快楽に耐えているのだろう。
ダンジョン食材による効果のお陰で、ついに念願のおセッセが……出来ている訳では無い。
今しているのは恋人繋ぎである。涼夏さんが俺の腹の上に跨り、両手で恋人繋ぎをしているのだ。
前回に比べれば、まぁ耐えている方だが、とてもじゃないがおセッセどころではない。
「涼夏さーん。いまなんぼでっかー?」
「ふーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ふーーーーーーーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ご、ごじゅ……………にぃっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ふーーーーーーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※恋人繋ぎをしているだけです。
「ぼちぼちどすなぁ」
「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡達哉ぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡おまえっ…………………なめんなよっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※恋人繋ぎをしているだけです。
「いや、そんな状態でなめんなって言われても……。最初の威勢はどこに行ったの?」
「う、うっさいっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ばかたつやあああぁぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※恋人繋ぎをしているだけです。
「なめんなっていうか、なんなら舐めてあげようか? そっちの方が早くレベル上がりそうだし」
「ああああああああああうそうそうそうそうそっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ごめんなさいごめんなさい、調子のりまひたっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※恋人繋ぎをしているだけです。
この日、涼夏さんはレベル70になるまで耐えて、意識を失った。
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