第6話 わりとタイプ

誰にも会わなかったことが、不幸中の幸いだと言えた。


「気晴らしにどう?」

と、由加に誘われた飲み会で、筋肉質の男の人が、少し気になった。

みんなに、料理をとりわけたり、グラスが空いたら、飲み物を追加注文したり、

しきりに動いていた。

こういう、リーダータイプの人は、私は、わりとタイプだった。


「小山さん。飲み物何にします?」

そう、その人に聞かれた。

「あ。じゃあ、カクテル。カシスオレンジで。」

こうやって、出会ったばかりの私の事を、名字で呼んでくれる、

礼儀正しい所も、好印象だった。


帰りは、一緒の方面だから、タクシー、二人で乗りませんか?と、

言われ、私は頷いた。


「小山さん、同棲しているんですか?」

私は、顔をしかめた。

少し考えて、由加から聞いているのかなと思った。


「はい。そうですけど・・・。」

「僕も同棲中なんです。一緒ですね。」

「あ。そうなんですか。奇遇ですね。」

私は、思いの外、自分が、がっかりしている事に気づいてしまい、

恥ずかしかった。

そして、私は続けた。

「同棲している彼氏に、毎日ぶたれて、アザだらけなんですよ(笑)」

私は、いかにも楽しそうに笑った。

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