第5話 大人の余裕

「ああ。あれ?他に好きな男の子いるっていう。」

幸也はケロッとして言った。

どうやら、由加が根回ししてくれていたらしかった。


「そうなんだけど・・・。」

「いいよ。別に、気にしない。そいつと付き合ってるわけじゃないんだろ?」

私は、大きく頷いた。

そして、泣きだしてしまった。

その狂ったような、私の泣き方が、私の異常さを表していた。


幸也は、そんな私を見て、ちょっとびっくりしていた。

経験豊富な、幸也であっても、こういう事は、はじめてらしくて、

軽くひいたのかもしれなかった。


だけど、それから、その日の事については、幸也は、

何も私から、ほじくり出そうとはしなかった。

そういう所に、ある種の大人の余裕が見えた。

そこは、尊敬に値するものだった。


一度、自分の残りの荷物をとりに、実家に帰った。

すると、家からは、生ゴミに似た、異臭がした。

きっと、生ゴミを定期的に出していないのだろう。


家の中は、荒れまくっていた。

カビた食べ物がついた、お皿や、服が散乱していた。

それらをよけて、自室へと急いだ。

自室は、家族に使われたらしく、汚部屋と化していた。

私は、悲しくなった。

本と服を、バッグに詰めて家を出た。

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