第7話 訳アリ

その人は、かなりビビッていた。

そして、自分の家の近くで車がとまると、

そそくさと、一目散に、その場を去った。


私は、なんで、あんなでたらめを言ってしまったのかわからなかった。

ううん。本当は、わかっている。

ショック過ぎた。あの人が、誰かと同棲している事が。


なさけなかった。気が多すぎる自分が。

私は、家のマンションの前で立ちつくしていた。


そして、ハッとした。

由加と幸也は、なんで、あんなに仲がいいんだろう?

不思議だった。


「ああ。やっぱ言わないとダメだね。幸也とは、中坊の時に付き合ってたの。」


由加が言った。

その、なんでもなさそうな言い方が、少し、しゃくにさわった。



「元彼って事?元彼の幸也と今でも連絡とりあってるって事?」


私は、まくしたてた。


「そう・・・・だね。真有に紹介するの、どうかなって、思ってたけど、あんた、かなり、大変そうだったから。」


由加が、ピースに火をつけた。いつもの銘柄だ。

由加が、一本どう?とばかりに、箱を私に近づけてきた。


「そっか・・。」


私は、それ以上は聞いてはいけない気がして、


幸也も私も、お互い、訳アリな事がわかって、かえって、少し肩の荷がおりた、楽になった。

幸也も私も、互いを許し合っているカンケイ。

それでいいんじゃないかと思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る