.

「───ありがとうございました~。」






────…パタン…





その後。




カサカサと小さな袋を手に、コンビニを後にした俺達は再び車に乗り込んだ。






「彩、お菓子何買ったん?」




「んーとね、コアラのマーチ♪」




「ぶっ」




「もちろんイチゴ♪」





────カサッ♪




再び車は動き出し、彩はコンビニ袋からお馴染みのコアラのマーチを取り出した。





コッ、コアラのマーチて!



どんだけ突っ込み所満載…!






「♪」





吹き出した俺を気にもせず、彩は上機嫌でコアラのマーチの封を開ける。





「あ~♪幸せっ!」




「ははっ。コアラのマーチで大袈裟な。」




「だってあたしコアラのマーチ大好きなんだもん♪


朝岡さんも食べる?」





「え?」





「────はいっ♪」






────…ドキッ…!






気づけば、目の前。




別にどうってこともない視界に、急に彩が映る。





「どーぞっ♪」





無邪気にコアラのマーチを一つ差し出す君に、どれだけ釘付けになった事か。





─────…






ふいに。




君の指先が俺の唇に触れた時。





……笑ってくれてもいい。





君とキスした錯覚さえ覚えたんだ。






「おいしーでしょ?」





「……うん…」





唇に残る君の感覚。




間接キスにも程遠い、指がただ触れただけのコト。





笑われてもいい。



バカにされたっていい。






「…───んーっ♪

春だねぇ~♪」





「……うん。



────春やな。」







───…俺にも、やっと。




君の指先から春が訪れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る