.

「───いらっしゃいませー。」






一足先に入ったコンビニには春商品が並び、コンビニでも春を感じてしまう。




これから花見に出かけるであろう人達が、酒や弁当、つまみをカゴに入れている姿が多数なのも春ならでは。






「彩、腹減ってないか?」




「うん♪


────あ!


朝岡さん見て♪このお菓子春限定だって♪」





彩は直ぐ様“春限定”のお菓子に飛び付き、あれやこれやと吟味し始める。




こういうとこはまだまだ子どもっぽいなぁと思いつつ、俺も彩と一緒になってしゃがみ込んだ。





「見てこれピンク♪」




「ほんまや。苺?」




「んー、桜味?」




「ふ~ん…桜かぁ…」




「あ♪メイクも春限定コスメとかあるー!」





そうはしゃぎ、今度はメイクコーナーに移動。




普段絶対に向かわないコーナーに若干戸惑う。





「……やっぱ春はピンクとかパステルがいいなぁ♪」




「へぇ…」




ピンクとかふわふわ感ある雰囲気って、女の子特有の雰囲気だなぁと思う。



こんな淡い色は特に。





「……彩は色で一番ピンクが好き?」




「え?何で?」




「や、何か持つもん持つもん全部ピンクやから。」



「あ~…!ホントだ…」



「自覚なし?」



「うん、なかった。」





ピンクのラメ入りグロスを持っていた手を見て彩は笑う。




「でも俺が思う彩のイメージカラーってピンクやなぁ。」




「え~…そう?」




「うん、それか純白なホワイト。」




「何それ~」





彩は俺が冗談を言っていると思っているのか、本気にしてないようで。






…───カタン…





グロスを棚に戻し、一瞬だけフッと表情を変え







「…───朝岡さんが思ってるほど、あたしは綺麗な色じゃないよ。」






─────…






そう言い切った数十秒後、彩はまたいつもの表情に戻りニコッと笑って





「───あ♪


あたしミルクティー持ってくるね!!」





俺に甘い香りを残してパタパタと飲み物コーナーに移っていった。





「……」





…───彩が。




俺にあんな表情を見せたのは初めてだった。




だから正直戸惑ったけど。




……まだ、君を知りたくて知りたくて仕方なかったんだ。

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