.

────…バタンッ!






車を止め、見上げたのは久々の高校。



正面玄関からザワザワとお喋りしながら沢山の生徒が流れて来るのを見ると、もう今日は授業終了なんだと思う。





「我ながらナイスタイミングやん♪」




俺は気分上々で車を施錠し、その波に逆らうように正面玄関に入っていく。






…───地元に戻ってくるのは、彩と最後に会って以来になる。




ほんの数週間前。




彩は身を切る覚悟でぶんと別れた。




相手の夢を尊重する為。



相手の夢を応援する為。




ぶんもぶんで自分の夢を追い、遠距離恋愛の不安から別れを決意した。






夢を選ぶのは間違いじゃない。




どちらも大事なものから一つを選ぶと、必然的にどちらかが疎かになる、と。




二人は今しか実現出来ない“夢”を選び、お互いを尊重するような形で別れを決めた。




俺はそんな二人の別れを喜ぶわけもなく、ただ二人が選んだ道をすげぇなと感心していた。




俺が二人の歳くらいの頃は、そんな思いやりとか皆無だったと思うから。




……悔しいけど、そんな大恋愛なんかしてなかったし。




ただバンドにバイトに音楽にって。




ひたすら自分だけの道を突っ走っていたから、彩とぶんはすげぇなと思う。






────…カチャ…




「───あっ!!!

朝岡さんやっぱり来てくれましたね~!


良かった催促して♪」




「んな上手い事言っといて。ただコレが目当てなだけちゃうんか~?」





────…ガサッ。





「キャーお菓子大量!!

朝岡さんありがとうございま~すっ!!!」




キョーコは手を上げて俺から差し入れを受け取り、上機嫌。





「朝岡さん、新生和太鼓にようこそ~♪」




続いて面識あるメンバーが笑顔で声を掛けてくれて。



ワイワイガヤガヤと、変わらず賑やかな雰囲気が俺を出迎えた。




「……ん?」




その中に彩の姿はまだなく、俺の気分ボルテージが少し下がっていく。





しょうがないか、と諦め半分だった時……






━━━━━ガラッ!







「───あ!彩♪」






────…ドキッ…!





背後のドアが急に開き、待ち望んでいた姿が現れ、俺の動きが止まった。

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