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────…ヴォン…
早々に車に乗り込み、エンジンを掛けてナビを学校にセットする。
「……渋滞は……
大丈夫、か。」
……なら最短距離で行けるかな。
ここから彩の学校までは、頑張れば一時間弱で着く。
車を飛ばして一刻も早く会いたい気持ちを押さえ、アクセルをゆっくり踏んだ。
「…───よし。」
何だかんだいいながら、俺はちっとも変わっちゃいない。
いくら身体にガタが来ようが、倒れようが、君に恋する気持ちは変わらない。
変わらないどころか、ますます好きになって仕方ない。
急に緩んでしまう頬も、チラチラと時間を気にする仕草も。
君の事を好きになりすぎて、歯止めがききそうもない。
────…フッ…
「…ん?」
走り始めて数十分。
ふいにフロントガラスに影が現れ……
「…お、綺麗…」
まるで俺の気持ちを表すように、窓から覗く景色がピンク色に染まる。
…───車は、ちょうど海沿いの桜並木を差し掛かっていて。
ちょうど視界に広がるのは、海と桜の見頃なグラデーション。
自然の色彩。
「……あぁ、そっか…。
もうここもそんな時期やねんなぁ…」
毎年、毎年。
この海沿いの桜並木は、ここら辺の地元民の内じゃ有名だったりする。
沢山の家族連れや恋人が、まさに今見頃の桜並木の中を歩いているのが見えてきて。
……ふと、ここにも春が来たんだなぁと物思いにふけってしまう。
桜並木は車で通りながら堪能したけど、海辺から見える桜並木は一体どんな感じなのだろう?
…───今は誰もいない海を見つめながら。
無意識に彩と二人であの浜辺を歩いているのを想像してしまって
「……よっぽどやよな、俺って。」
ふっと自分に笑いが込み上げて来て、自分で自分に笑ってしまった。
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