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「……元気、か…」
…───良かった。
安心からかフッと笑みを溢し、便箋を元の四つ折りに戻してポケットに入れた。
「───…チカから?」
「…っ!?!?
~~~…びっくり…した……」
「……さっきからいたわよ、失礼な。」
━━━━プシュッ!
急に背後から現れ、缶ビールを開けるマリアにふいを突かれた俺。
「……飲む?」
「……いやいや。
運転手に飲ませたらあかんやろ。」
「あぁそっか。失礼失礼。運転手の前に病人だもんね。」
「・・・・・・」
…───チカと別れてから数週間。
俺はまだ病み上がりの身分らしく、周りから病人扱いが未だに抜けてはいない。
その証拠に頭には壱からのニット帽、首には吾郎からのマフラー、足にはマリアのジャケットが掛けられている始末だ。
「…───チカからの手紙、何て書いてあったの?」
「……元気だって、さ。」
「……純に未練タラタラだって書いてなかった?」
「いーや。タラタラやったら自分の宛名書いとくやろ。」
俺はヒラヒラとマリアに封筒をちらつかせ、チカの意思を確認させた。
「……へーぇ。
チカにしてはかなりの進歩じゃん。」
「……うん。あいつはあいつなりに強くなってるんちゃう?」
チカからの手紙には、チカの新しい住所が書かれていなかった。
イコール、実質的に俺からチカに手紙を返すことは不可能になる。
それはチカの性格からして、かなりの進歩だと思う。
「…───最初で最後の手紙……かな。」
ポツリと呟き、ふわふわと舞う桜の雪を見上げた。
チカにも幸せになって欲しい。
───…この名もなき場所から、そう願いながら。
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