.

「───行くで~!」






────…ヒュッ!






澄んだ青い空に弧を描き、ボールは少し距離が離れた壱と吾郎達の手元に渡った。





「───さ~っすが純!ありがとう~っ♪」





ブンブンと手を振り回し、壱と吾郎はまたキャッチボール(らしい遊び)を再開した。





────…






「───だからぁぁぁ!ゴローちゃんってば一体どういうコントロール感覚してるのぉぉぉ!?!?」





「すまん壱~。オレ今下手って気付いたかも~」





「気付くの遅いよっっ!」










「───ふっ…」





全然キャッチボールになってない……。




俺は形にすらなってない二人のやり取りを見て笑い、また桜の幹にもたれ掛かるように座った。




…───そして。






────…カサッ…




ジャケットのポケットに忍ばせておいた未封の手紙を取り出し、じっと見つめる。










───────────






朝岡 純様





───────────








「────…」







─────…ピリッ





皺も汚れもない、真っ白な便箋に書き綴ってくれた想いの封を開けた。









───────────





DEAR 純





純、元気ですか?




私は元気にやってます。




元気……というか、毎日必死に前を向こうと頑張って生きてるよ。





何もかもゼロからのスタートは色々大変だけど、毎日が新鮮で新しい発見ばかりです。





純はもう身体大丈夫ですか?





もう何も出来ないけど……




いつもあなたの幸せを遠くから願っています。







FROM 川瀬 チカ




───────────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る