第28話 旅行編、ショッピング

 たまには街を歩こうと提案するエラ。ウェイは自分の仕事が増えるので一瞬苦笑したが、直ぐに切り替えていた。

 その様子にバックは申し訳ない気がしてこう言う。

「無理しなくていいよ、ウェイ」

 バックがそう言うのに、ハッとしたエラは慌ててウェイの方を見る。

 ウェイは二人を見ながら笑顔だ。

「確かに仕事は増えますがいい経験ですわよ。この際だから色々欲しい物を買いましょう」


 こうしてショッピングモールに行く四人。車を駐車場に置いて、中に入っていく。

 まずは洋服だ。ショーウィンドウに飾られているのを見て叫ぶエラ。

「これ可愛いわね!」

「中にも入ってみましょう」

 シャルがエスコートする。バックは中に入って驚いた。所狭しと様々な洋服が並んでいる。だがどうしたらいいかわからない。こういう所で買ったことがなかったからだ。

「好きな洋服を手に取って見ていいんですのよ」

「怒られないの?」

「当たり前だよ、試着もできるんだよ!」

 エラはバックの服のサイズを聞く。バックが答えると、バックに似合いそうな服を選んでくるエラ。


「着てみて」

 バックは試着室に案内されて、着替える。いつもの地味な服ではなく、赤いワンピース。

「うーん、ちょっと派手すぎるかな?」

「あまり目立ちすぎるのもよろしくありませんわよ」

 そういうと水色のワンピースを持ってきたウェイ。

「なんでワンピースばっかり持ってくるの?」

「バック、あなたが言ってたんですわよ。着替えやすい方がいいと」

 そんなこと言ったかなと思いながらバックは着替えてみる。

「よく似合ってるね。これ買ってもらおうか」

「先程の赤のワンピースも室内では着れましてよ。あれも買いましょう」

 そして今は冬だからとカーディガン等、暖かくなるものを選んでいく。

 エラとウェイは不慣れなバックのために色んな服を試させてあげた。それにバックが感謝した。

 エラとバックも服を自分の選んでいく。そこにバックが口を出した。


「これなんか可愛いんじゃない?」

 それはキャラクターの絵柄が入った服だ。

「ちょっと子供過ぎない?」

「バックのオススメでしたら買いですわ」

 その後靴を探しに行く。バックはデザインの良い運動靴を買ってもらい満足する。

 エラはブーツを買ってもらう、オシャレなデザインだった。

 ウェイはヒールを買う、ヒールはコツがいるが時に武器になる。

 シャルは靴は買わず、鞄コーナーへ向かう。お揃いのブランドの物を買おうと提案したシャルに、このブランド物が良いとバックが言い、それを買う。

 高級なブランドの鞄は、四人を美しく見せた。


 化粧品コーナーに向かうと、シャルが色々持ってきて買う。そして鏡を持たせながらバックをお化粧で美人にしていく。

「似合っていましてよ」

 鏡を見るとそこにいたのはバックでありながらバックではないような感覚に襲われる。

「私もしてよー!」

 エラの言葉に今度はウェイがエラに化粧をする。

「ちょっと……ウェイで大丈夫?」

 エラが不安そうに言う。ウェイは笑って化粧を施していく。立派な美人になった時エラは驚いた。

「シャルはともかく、ウェイも化粧の勉強とてもしてるのね」

「ワタクシあらゆる事を習得させられましたの。化粧はハニートラップにも使えますので」

 そうして全員美人になった所で食事にする。バックたちは注目を浴びていた。

「やりすぎましたわね……ちょっと調子に乗りましたの」

 食事を済ませると休憩。そうやって休んでいると声をかけられた。


「君たち暇? 俺たちと遊ばない?」

 一般人だ、荒事にするわけにもいかない。バックとエラは、ウェイとシャルを見た。

「ワタクシたち全員暇ではありませんの。こういうモノでしてよ」

 ウェイは何かのマークを見せた。すると男たちは顔を真っ青にして、謝罪して逃げていく。

「何を見せたの?」

 バックが尋ねるとウェイは笑って、聞かない方がいいと言った。

 シャルの方を見ると苦笑していた。

「とある有名な反社のマークですよ」

 バックたちはその組織の女たちだと思われたらしい。

「ちょっと! 私そんな組織にいないんだけど!」

「化粧でわかりませんわよ。安心してくださいませ」


 その後もしつこくナンパしてくる人達もいた。ウェイは反省した。

「目立ちすぎましたわね」

 そして歩いていると、唐突にこう言った。

「振り向かないでくださいませ。シャルは前に立って先導して、バックとエラはシャルを追いかけてくださいませ」

 ウェイの言葉に緊張が走る。

「尾けられていますわ」

 そのまま人通りが少ない場所まで行く。ウェイの携帯電話が鳴り、出ると男の声だった。

『遊びすぎだぞ』

「師匠が尾行してましたの?」

『そうだ、気を抜きすぎだ。バック=バグの命を狙われている危機感を抜くな』

「師匠、ワタクシ、気など抜いていませんわ。その証拠に師匠がナンパされた辺りから尾行していましたの、気づいていましてよ」

『それは間違いだ、それは俺が別に配置した刺客役の男だ、俺はショッピングモールにいた時から尾行している。お前は全く俺に気づいていなかった。味方の位置も把握するのがお前の仕事ではないのか? 一応言っておくが気付ける範囲にいたぞ』

 俯くウェイ。はしゃぐのに集中し過ぎていたようだ。

「申し訳ありませんわ。以後気をつけますの……」


 バックはその様子にウェイから携帯電話を奪ってバックは話す。

「ウェイを責めないで! 私のために色々してくれてるのよ!」

『そうかもしれない。だが君に何かあった時、それは責任問題で済む問題ではないだろう? 遊ぶことは禁止しないが、気を抜いて君の命を守れないのなら何のためにウェイはいる?』

 バックは考える、だが答えは決まっていた。

「私の友達としていてくれるだけで私の感情は安定してる。あなたは博士から報告を受けていないの?」

 まるでウェイの師匠を調査不足のように言うバックに、男は言った。

『それはエラ嬢だけでも事足りるのではないか?』

「取り消して!」

 死蝿が一匹出現する。バックは怒っていた。ウェイはバックから携帯電話を取り上げ、一言言った。

「師匠、死蝿が出たようですわ。師匠こそまだまだですわよ」

 電話を切ったウェイは、師匠が『すまない、取り消す』と伝えてくれと言っていたとバックに報告した。

 その後、死蝿の処理と、死蝿のせいで死んだ人たちを神薬で生き返らせるのに奮闘して、バックたちは買い物を終えた。

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