第13話 村の殺戮


「おはようございます! キリ様……」


少しアルは落ち着いたみたいだな……


だが、目の下には隈が出来ているし目も腫れている。


昨日は泣いて過ごしたのだから仕方ない。


それでもかなりの美人だ。


そして、横に居るトロス。


魔物と解かると可愛らしく思える。


前の世界でも狼を使い魔にしていた悪魔や狼に変身出来る悪魔も居た。


それに魔物……いいな。


癒される。


美人の魔族に癒しの魔物……俺の悪魔生はこの為にあったのかも知れない。


「おはよう……」


「くぅ~うん」


トロスは頭をぐりぐり押し付けてくるし、最高の朝だ。


「キリ様、私の顔に何かついていますか?」


あらためて見ると…….


綺麗な金髪、色白の肌……そして大きな胸。


肉つきが良くそれでいて太ってない。


目は切れ長で顔も整っている。


耳が長くとがっていて、頭部には小さめの羊の様な角が2つある。


昨日も美人だと思っていたが、悪魔としてこれ以上ない位の美人だ。


俺は美少女では無くこの位大人な容姿が好みだ。


尤も、悪魔は容姿と年齢は比例しない。


齢数千歳の幼女も居れば生まれた時から大人の悪魔も居る。


だから、これはあくまで容姿の好み。


中身は関係ない。


サターニャ様はまぁ、子供……いうと死ぬ程殴られるから言えない。


「いや、凄く綺麗だ……見惚れる程にな」


「わ、私がですか? そんな事ありませんよ」


大人の女性がはにかむ姿はなんとも言えない。


「そうか……まぁ良い……それじゃ、少し休んだら行くぞ!」


「行くって何処にですか?」


「アルを迫害し、アルの子供を殺した村に……皆殺しにしてやる! そして、お前を裏切り子供を殺した男には生きて産まれて来た事を後悔する程の拷問の末殺してやる……だから安心しろ!」


「はい!」


良い面構えだ。


さっきまでのどかな表情は消え、怨嗟を含んだ表情に変わる。


これでこそ魔族、悪魔に近い存在だ。


◆◆◆


冒険者たちの馬車から檻を下ろし、その馬車で村へ旅立った。


「すまないな」


「いえ、私の恨みを晴らして貰う為ですから……気にしないで下さい」


アルに御者をして貰い、俺はその後ろに座っている。


大昔に馬は乗った事はあるが、ここ数十年以上騎乗していなかったからか、上手く扱えなかった。


それに俺は村の場所が解らない。


だから、アルに頼んだ。


「そう言って貰えると助かる……」


「いえ、キリ様にも苦手な事があると解って安心しました」


「そうか……」


俺の殆どの能力は殺戮だ。


本来は殺して殺して殺しぬくそれに特化した悪魔だ。


それが一時期神として祀られた事で弱まった。


だが、本質は変わるもんじゃない。


人の欲を満たし堕落させたりするタイプではない。


ただ、ひたすら殺戮、恐怖を与える……それが本来の俺だ。


まぁ、サターニャ様のせいで少し可笑しくなってしまったが。


「はい、あれ程の能力は魔族の中でも上位の方しかいません」


と言う事は……上位魔族には居ると言う事か。


今から会えるのが楽しみだ。


◆◆◆


「キリ様……この先が村です!」


遠くに村が見えてきた。


「アル……それでどうする? 俺の傍であいつ等が死んでいく姿を見ていくか? それとも此処で待ち、全て終わってから見るか?」


「あいつ等が死んでいく姿を見たい! そう思います!」


「そうか……」


それでこそ魔族だ。


恐らく力があるならば、彼女は自分の手で本当は殺したいのだろう。


村についた。


馬車から俺は降り走りだす。


「後から歩いて来い!」


「はい!」


「貴様、何故此処に……」


「煩いよ!」


村の入り口で槍を持っている男、自警団みたいな奴を爪を伸ばし軽く上から引き裂いた。


「ぎゃぁぁぁぁーーっ」


悲鳴を上げ男は真二つになり絶命した。


さぁ……殺戮の始まりだ。


この世界の武器じゃ相手にならない。


恐らく、俺を相手にしたいなら前世でいう機関銃位は必要だ。


同じ様に武器を持った男が複数こちらに来たが…….


「遅すぎる……」


俺の爪なら簡単に引き裂けるし、つけば狙った臓器を貫ける。


引き裂き、斬りつけ、突き刺す……


面倒くさいな……


「貴様ぁぁぁーー魔族かぁぁぁーー」


「良かったな! 本物の魔族が来てやったぞ! 魔族に手を出したら、魔族が敵になるそう思わなかったのか! 馬鹿な奴らだな」


「ヒィ……魔族だ! 魔族がせめて……ぐふっあがっ」


俺は近くの男の喉に爪を突き刺した。


血液がそのまま体に流れ込み苦しそうにのたうちまわる。


「ふっははははっ! 馬鹿な奴め! こんな所で溺れてやがる……本当に馬鹿な奴だ!」


「たっ助けてお母さんーーっ!」


「私はどうなっても構わない、娘だけは助けて下さい……お願いします……お願い……えっ! いやぁぁぁぁぁーーーアリアがアリアがぁぁぁぁーー」


爪で娘の首を跳ねた。


「俺は慈悲深いのだ! お前達は魔族だからって焼き殺しただろう? 俺は優しいから一瞬で殺してやったぜ! 全身火傷で死ぬよりは幾分かマシだろう? お前も死んでおけ……悔やむなら魔族を殺した自分達を恨むんだな!」


「ああっ……いいわ、殺しなさい」


「言わなくても殺す」


どれだけ暴れただろうか……目の前に殆どの人間は居なくなった。


肉片が転がり、血の海が出来ている。


「ハァハァ、ざっとこんな物だ……あとは……アル、お前の元旦那の木こりはこの殺した中に居るか?」


ヤバいな。


つい殺戮本能に目覚めやってしまった。


これじゃ楽に殺してしまった事になる。


「いません……」


「そうか、良かった……それじゃ探そうか?」


「キリ様、彼奴は木こりですから、今はきっと森の中です」


そうか……


今はまだ昼間だ。


木こりや猟をしている人間は外に居る。


当たり前だ。


「それじゃ、探しに行く前にこの村を燃やしてしまおうか? 毒でもあれば井戸にぶち込み……」


「ファイヤーボール! ポイズン! こんな物で如何ですか?」


これが魔法か……


アルは右手から火球を放ち一軒の家に火を放ちながら左手から紫の液体を井戸に放った。


「凄いな……」


「キリ様、これでも魔族の端くれです。この位は出来ますよ」


「そうか……」


アルを俺は見くびっていた。


「それじゃ、森に行こうか?」


「はい……ただ、念には念を入れてもう少し火をつけます。ファイヤー! ファイヤー!」


かやぶき屋根のせいか、火はあっという間に広がっていった。


家屋が無くなり、井戸の水は飲めない。


もし、外に出ていて生き残りが居ても、もう真面に生活は出来ないだろうな。






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