第10話 俺の癒しはモフモフじゃ無い!
取り敢えず、散歩に出る事にした。
此処に来て、初めての外出だ。
話しを聞けば、城下町を出さえすれば魔物に出くわすそうだ。
魔族は流石にこの辺りには居ないらしいが『魔物』には良く会えるらしい。
それは楽しみだ。
「恵介様、危ないですからせめて供を連れて行ってください!」
「ライア、俺の強さは知っているだろう? 取り敢えず夜には戻ってくるから……行ってくる」
いや、この世界を魔族から守って欲しいから異世界人を呼んだのに……何を言っているんだ。
「待って下さい! それなら騎士である私が共としてついて行こう!」
「ミランダ、悪いな一人で行きたいんだ……その分今夜は、思いっきり相手してやるから」
「そう……待っていますからね」
「ミランダ、何を言っているの? 恵介様は私と楽しむのです! 騎士なら女王の私に譲りなさい!」
「いいえ、こればかりはライア女王でも譲れません!」
「あの……だったら今夜は私の所に来ませんか? メイドとして誠心誠意ご奉仕しますわ」
「「メイドの分際で!」」
まぁ良い……何時まで経ってもこれじゃ出て行けないから……もう行こう。
「夜には帰るからな!」
それだけ伝えて俺は城を後にした。
◆◆◆
街に出るとまるで中世の街並み。
その昔に俺が過ごしていた懐かしい風景。
あの頃は、悪魔崇拝の秘密結社があって悪魔として楽しい生活を送っていた。
ああっ、素晴らしい!
衛星もネットも無い……本当に素晴らしい生活が待っている。
此処なら悪魔らしく生きていける。
どこか懐かしい街並みを見ながら歩いていき門を出るとそこは街道。
此処からは何時魔物が出て来てもおかしくない。
一番出やすい魔物はゴブリンらしいが、今から楽しみだ。
なんとなくグレムリンに似ている気がする。
あれは……何となく愛らしい。
昔は結構見たのに、ここ数年は見かけていなかった。
滅んでしまったのか……
街道からそれ草原を歩いていると……あっ、いたいた。
紫の肌に醜悪そうな顔……物凄く愛らしく感じる。
こんな生き物にまた会えるなんて……
「ううっ……グスッ、なんて可愛いいんだ……」
思わず感動から涙が溢れてきた。
「ぐがやぁぁぁぁーー」
声も心地よい……
驚かすと可哀そうだから、少し離れた場所の木に上り眺める事にした。
長い事、魔界の生物に出会っていなかったから忘れていた。
『愛でる』気持ちが浮かび上がる。
人間に対する愛は無い。
だが、他の生物に対する愛情はある……そうか……人に対する愛が無いだけで……別の生物に対する愛はあったのか…….
あの醜悪な顔。
あの独特の鳴き方。
本当に癒されるな……まるで昔の魔界に戻ってきたみたいだ。
あの独特な動き、本当に良いなぁ。
木に寝ころびながら癒されるように見ていると……
「ゴブリンが居たぞーーっ」
「6匹だぁぁぁーー狩るぞぉーーっ」
「行くぞぉぉぉーーっ」
「おう」
あの恰好は冒険者か……3人居る。
俺は悪魔だ……
あんな愛らしい生き物を狩るなんて許せない。
俺は木から飛び降り冒険者の前に立ちふさがった。
「おい!」
「このゴブリンは俺達の獲物だっ!」
「他のパーティが狙っている獲物を横取りするのは違反だぜ」
「いや……横取りなんてする気はないよ! 俺が狩るのはお前達だからな! 」
そう言い爪を伸ばし襲い掛かる。
ゴブリンを狩るような冒険者が俺に敵う訳が無い。
一瞬で近づき、一人目の冒険者の心臓を貫いた。
「ひぃ……化け物っ!」
「お前、魔族だったのか……た、助けて……助けてくれーー」
走って逃げようとしたが、悪いな……俺は速さだけなら悪魔の中でも屈指のスピードを持っている。
すぐに追いつき一人は首を跳ね、もう一人はお腹を裂いた。
「うわぁぁぁぁーー」
首を跳ねた方は絶命したがお腹を裂いた方は転げまわっている。
俺はこれでも慈悲深い。
可哀そうだから、同じように首を跳ねて楽にしてやった。
ゴブリン達は遠巻きに俺の爪を見ている。
俺が悪魔本来の姿になると不思議そうな顔でこちらを見ている。
自分達に危害を加える存在かどうか確認しているようだ。
転がっている1体の冒険者を切り刻み、ゴブリンの方に幾つかの肉片を放り投げた。
暫く、警戒をしていたが……チラチラこちらを警戒し見ていたが、ついに肉片を食べ始めた。
食べ始めると後は早い。
残りのゴブリンが残った冒険者の死体に齧りついていった。
『俺はお前等の味方だ』
そう笑って見せたが、まだ警戒している。
まぁ、魔物どうしでも、襲い合うから仕方が無いか……
俺は、楽しそうに冒険者を食べているゴブリンを笑顔で眺め続けた。
本当に癒されるな。
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