第7話 血にまみれた王宮
「さて貴方には、適性が無い事がはっきりしました……残念ながら貴方には魔王軍と戦う力がありません! すぐにこの城を出て行って貰います!」
俺の測定の数値を見たライア王女がそう言い始めた。
「なに、そのクズみたいな数値、カスも良い所じゃないか?」
「先公ここ出てすぐに死ぬんじゃないか」
「別に良いじゃん、黒木なんてどうなってもさぁ~」
「勝手に呼び出しておいてそれは無いんじゃないか?」
ニタニタしながら生徒も騎士もこちらを見ている。
やはり此奴らはクズだ。
俺は好きで此処に来た。
だが、もし俺が悪魔でなく只の人間だったら……見知らぬ土地でいきなり放り出される。
そういう事だろう。
外国に放り出されても地獄なのに……此処は異世界。
不幸な人生、最悪死すらあり得る筈だ。
それを平気で行う王女。
それを見過ごす生徒達……
此奴らは敵認定で良いだろう……
「私達がこの世界に呼び出したのは魔族と戦って頂ける異世界の戦士たちです。役立たずを支援など致しません……助けるつもりもありません」
「なぁ、お前達、先生がこのまま追放されるのを黙って見ているのか?」
これは俺の慈悲だ。
ここで助けに入るような奴がいたら、助けてやる。
嫌いな奴らだが……一緒に過ごしてきた者に対する『慈悲』だ。
此処で助けようとしないと言う事は『俺を見殺し』にする事だ。
殺されても文句言うな。
「役立たずは出て行けよ!」
「大体、先公だからって偉そうにするなよ」
「イケメンなら兎も角、陰キャなんか助ける義理なんてないよね」
「バーカ、バーカ」
「別に先生が死のうが生きようが私には関係ないしょ」
「そうか……なぁ王女、もしこの俺がこの場に居る誰よりも強くて、能力があるとしたら、どうする? 『能力の無い奴』は斬り捨てて俺を選ぶのか? 今の話だと、能力が無い奴は何をされても仕方ない! そう聞こえるのだが?」
「何を馬鹿な事を貴方は『無能』なのよ? そうですよ……力が無いから捨てるのよ……これで満足いったかしら?」
言質とったからな。
「そうか……残念ながら俺はこの場に居る誰よりも強い! 元生徒を含むこの城の人間全員に決闘を挑む! 俺が無能だと言うなら受けるよな! 冷酷王女!」
「この私が冷酷王女……命だけは助けるつもりでしたが、死にたいのですね……いいですよ、受けましょう! その人間を殺しなさい!」
王女の傍を離れて騎士が数人こちらに抜剣してきた。
「貴様ぁぁぁーー王女に対して不敬だ……不敬を死をもって償えぇぇぇーーー」
やはり弱い。
俺の悪魔としての名は無い。
ただ『切裂く者』と呼ばれていた。
俺に切裂けぬ物は無い。
そして、俺は力こそ並の悪魔並だが、スピードに掛けては悪魔の中でも最速に近い。
このスピードこそが従者の条件。
敵より素早く動き、確実に守る行動がとれる。
だからこそ魔王の娘、王族のサターニャ様の従者だった。
剣を簡単に避け、指先の爪を伸ばした。
そして、その爪で騎士を鎧事引き裂いた。
まるでカッターで紙を斬ったように騎士は真っ二つになった。
「良くもこの程度で、無能と馬鹿にしてくれた物だ……お前等全員死ね」
まさか、逆に仲間が殺されると思っていなかったのか、俺が引き裂いた騎士の後ろにぼうっと立っていた5人の騎士が俺に襲い掛かってきた。
「貴様ぁぁぁーー良くもカルロをぉぉぉぉーー」
一人が叫び、他の4人は黙って頷き俺に襲い掛かってくる。
連携はとれている。
悪くはないが……遅い。
所詮は人間、悪魔には敵わない。
「王女……この程度のクズを侍らせて強者気取りですか? これ騎士じゃ無くて虫けらですよ」
素早く動き、同じように引き裂く。
鎧事引き裂かれ、暫くしたら、体が二つに分かれていき、内臓が体から零れ落ち上半身が下に落ちていく。
雑魚が粋がるからこうなる。
だが、俺が確実に殺したいのは此奴らじゃない。
異世界人……元の世界から来た生徒。
その中でも勇者を含む5人だ。
まずは勇者になった大樹だ。
そのまま疾風のように走っていき、首を狙った。
勇者だから特殊な加護があるかも知れない。
だからこそ確実に仕留められる首を狙った。
大樹の首は簡単に宙を舞い、体は崩れ落ちるように後ろに倒れた。
大した加護じゃないようだ。
「これが勇者!? なんでこんなクズが優遇されて俺が追放なんですかね?」
「「「いやぁぁぁぁぁーーー」」
大樹の横に居た女生徒が悲鳴を上げる。
ついて無いな……そこ、俺の手が届く範囲だ。
そのまま、右手を軽く振ると、横に居た二人の女生徒のお腹が切れていき、内臓が飛び出してくる。
笑える。
必死にお腹を押さえているが、もう終わりだ。
「お前、教師だろう……教師がこんな事して良いと思っているのか?」
剣聖のジョブも貰った大河が言ってきたが……馬鹿だ。
まだ、剣も持っていない。
自分が殺されないとでも思っているのか……俺はちゃんと『決闘』を申し込み王女が受けた。
もう殺し合いが始まっているんだ。
何故、武器をとらない。
「さっき誰も庇わなかった事で、教師と生徒の関係は終わりだ! それにお前達が一度でも俺を教師として扱った事はあった……あぶねー」
「ファイヤーボール!」
火の玉が飛んできたがゆっくり過ぎる。
この数百倍の火力でも悪魔という存在は怪我一つ負わない。
簡単によけ、そのまま大河を体の中央から真っ二つにした。
「先生やめてーーーっ」
「なんで、私達殺されるような事してないよ……お願い助けて」
知らないな。
今更なんだ……さっきチャンスはやった。
見棄てた癖に何をいっているんだ……
止めに誰かが入る前に最低5職は殺さないとな……あと三人か。
恐らく魔族にとってこの5職は脅威になる。
塔子は……居た。
「きゃぁぁぁぁーー来ないで! 来ないでよぉぉぉぉぉーー」
「遅いな……聖女!」
左手を軽く振る。
それだけで体は真っ二つ。
恨みは余り無いから楽に殺してやった。
次は……聖人だ。
あと二人……あと二人殺せば。
魔王側が有利になる。
運が良い……聖人と綾子が近くに居る。
「いやぁぁぁぁぁーーーー」
「やめろぉぉぉぉーーー」
止める意味が無い。
軽く手を振るだけで二人の首が宙に舞う。
これで、最低限殺さなくちゃいけない奴は殺した。
ははははっ……ビビッて動けなくなってやがんの。
「かかって来いよ! お前等『異世界の戦士』なんだろう? 王女、助けを呼べよ……おらっ! 決闘で受けたんだぜ! 最後にはお前と王様が死ぬんだからよ……死にたくないなら早く騎士でも兵隊でも呼ぶんだな!」
「狂っている……」
知らねーよ。
此処でようやく、生徒達も武器を持ったが……手が震えている。
騎士や兵士も手が震えているが……残念、これは決闘だ。
殺さない道理が無い。
「こちらを、見捨てて殺そうとしたんだ! 狂ってなんかいない……敵を殺しているだけだ」
「そうか……ならばこちらも只じゃ置かぬ! 王宮騎士団! テンプル騎士団! 全部呼べ! ライアだからお前は甘いのだ! この城の全総力を持ってこの男を倒せ!」
「ハッ父上!」
それは面白い。
俺は悪魔だ……殺戮こそが本能。
全員で逃げればかなりの人数が追えなくて見逃す事になったのにな。
『逃がそうとしない』
これならいける。
俺は近くに居る人間を片端から殺していく……気が付くと俺と一緒に召喚された生徒は殺し終わっていた。
だが、それでも殺戮の本能はおさまらない。
散々、サターニャ様に言われ我慢して生きて来たタガが外れた。
『ああっ、これこそが悪魔』
エジプト、古代バビロ二ア……サタン様の元沢山の者を殺した。
俺を神として祭る一族の為に数千の軍勢を皆殺しにした事もあったな。
もっと来い。
掛かって来い……幾らでも相手してやるぞ。
◆◆◆
「儂らが悪かった……お前は、いや貴方様は無能じゃない」
「本当に私が悪かったです……謝ります……幾らでも謝りますから……殺さないで、お願い殺さないで……」
気が付くと辺り一面血の海だ。
死体が増えて来たから殺した人間を窓から放り投げていた。
もう何人殺したか解らない。
多分、この城の中で戦える人間の殆どは殺してしまった気がする。
恐らく千単位殺しているのかも知れない。
「それじゃこれで決闘は終わり! 俺が強いのは解っただろう? 」
「「はっハイ!」」
「それでさぁ、強ければ高待遇にしてくれるんだよな? 勇者を含む異世界人全員を殺し、この城の騎士や兵士の大半を殺せる実力のある俺の待遇はどうなるんだ?」
「それは……」
「言っておくが、待遇しだいで数日経ったらすぐに魔王城に向かってやるぜ! どういう待遇にしてくれるんだ!」
「本当ですか? それなら王の名のもと好きな物を差し上げます……」
「そうか、それなら女だ! 取り敢えず城の中の女を片端から抱かせろ!」
「そんな物で良いなら構いません……お好きなだけ抱いて構いません」
「そうか……城の中の女って俺はいったぞ! 最初の相手は、ライアお前だ!」
「嘘……いや、いやぁぁぁぁーーー! お父様ぁぁぁーー」
王は目を伏せた。
当たり前だ、逆らえば自分が殺されるだけで、何も変わらない。
「ライア……逆らってはならぬ」
親子で泣いているが知らねーよ。
俺は悪魔だ。
次は色欲を満たさせて貰おうか……
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