第6話 測定
話が終わって別室に移ると、すぐに水晶による能力測定の儀式が始まった。
これは異世界から召喚した者たちのスキルやジョブが解り、各種能力を数値化して見る事が出来るらしい。
生徒達は、我先に並んでいたが、俺は何か貰ったわけでないから急ぐ必要は無い。
俺はゆっくりと、一番後ろに並んだ。
どうせ何も貰えていないのだから、急ぐ必要はない。
能力が何も変わって無い事は体感で既に解っている。
心配なのは俺が悪魔だとバレるかバレないかだけだ。
測定を終えた生徒は、はしゃいでいたが、此奴ら馬鹿なのか。
その能力は、それが無いと生きられない程、過酷だから貰えた物だ。
「俺は魔法使いだったよ、火魔法のジョブがあったんだけど?これアタリなのか?」
「普通じゃないの?私は魔導士だったよ!最初から土魔法と火魔法の2つが使えるみたい」
「えー! 私も魔法使いだって、どう見ても魔導士より格下よね、魔法も水魔法しか無いんだもの」
そうか、てっきり俺は『皆が自分のジョブやスキルはある程度解っている』と思っていたんだけど、何を貰ったのかここに来るまで解らなかったのか……測定して初めて自分の能力が解るのか。
しかも、俺にとっては思った程の脅威じゃない。
成長したら解らないが、今の此奴らなら全員瞬殺できる。
「気にする事はありませんよ! この世界では魔法使いになるにしても沢山の修行をして初めてなれるのです。最初から魔法のスキルが1つでもあり、魔法使いのジョブでも充分に凄い事ですよ」
「本当ですか? 良かった!」
「安心したよ」
馬鹿か?
この世界の人間が勝てないから召喚されたんだろう?
この世界の人間が努力すれば手に入る能力じゃ駄目だろうが……
貰ったジョブの中じゃ下。
ぞれで戦争に行くんだ……もっと冷静に考えろ……いや、俺からしたらそれの方が良いのか。
会話を聞く限り、魔法使いや騎士等が多いみたいだが、それでもハズレではなくこの世界で充分に凄いジョブらしいが……悪いが今の所ザコにしか思えない。
それより良いジョブが恐らく、魔導士とかなのだろう、そう考えると勇者、聖女辺りのジョブが本当の意味で凄いジョブなのかも知れない。
それがどの位強いのか……そこで今後の予定を決めよう。
あとはこの世界の人間の態度だ。
『デーモンイヤー』
これで、周囲の会話を良く聴く事が出来る。
聞き耳を立てて俺が聞いている限りでは、凄いと思えるようなジョブは今の所『魔導士』位しかでて無さそうだ。
それでも雑魚だ。
「私、大魔道だってさ、魔法も最初から4つもあるよ……当たりかな、これは絶対に当たりだよね!」
『大魔道』名前からして凄いジョブの様な気がするが、その名前は悪魔側の人間に悪魔が与えた称号だったが……此処では違うのか。
どうやら魔法を使う、最高のジョブは大魔道らしいな。そう考えると魔導士は少し良いジョブ位だな、本当に凄いジョブはやはり、 勇者、聖女、大魔道、賢者辺りだろう。大魔道のジョブを引いた小松を見た時に担当の奴が驚いた表情をし、漏らしたから間違いない」
俺は静かに小松の背後に近づき、水晶に映っているステータスを見た。
小松 綾子
LV 1
HP 180
MP 1800
ジョブ 大魔道 異世界人
スキル:翻訳 アイテム収納 闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1
これが、最高レベルの能力か……
やはり成長しなければ脅威じゃないな。
◆◆◆
「これは凄い、勇者のジョブがでたぞ」
検査の担当者の驚いた声が聞こえた。
なんで勇者のジョブが大樹なんだ……
あの女神は無能なのか?
彼奴は正義感なんてなくて、まるで半グレの様な奴だ。
どう考えても危ない奴だ。
地球の神の判断なら、地獄行き決定のような奴だ。
剣聖が大河
大賢者が聖人
聖女が塔子。
あの女神は本当に頭がお花畑だ…….
少しは真面な奴がいるのに『最悪の4人』を何故重要な五職に選ぶんだ……悪魔の俺でも訳がわからない。
これは……まるで悪魔側が行う人選だ……
そしてとうとう俺の番になった。
「なんだ、これはまさか『無能』がいるなんてな」
別の意味で検査の担当者は驚いている。
無能と言う事は俺が悪魔だとはバレていない。
黒木恵介
LV 1
HP 17
MP 14
ジョブ:無し
スキル:翻訳 アイテム収納
そういえば2つだけスキルが入ったとか言っていたな。
あの、女神……悪魔に加護を与える事が出来るとは、力はあるのか?
それともこの世界はルールが違うのか……
気がつかれないように飾ってある鎧の小手部分を軽く握った。
簡単に小手は潰れた。
力は失ってない。
なのに、この数値……訳がわからない。
今後どうするかは……相手の出方次第だ……まずは様子見だ。
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