大谷領
俺たちはいくつもの険しい山を越え、大谷家の領地に足を踏み入れた。
この大谷領は自然豊かだが、その厳しさを物語るような急峻な地形が広がっている。
細い山道や崩れかけた岩肌が続き、気を抜けば危険が待っている場所だ。
風が冷たく吹き、空には厚い雲が立ち込めている。
馬に乗りながら険しい道を慎重に進んでいたが、途中で突然、山道の先に何者かの気配を感じた。
「山賊か…またか」
俺は前方を睨みながらつぶやいた。
これまでに何度も山賊の襲撃を受けたが、奴らの腕前じゃ俺たちには到底敵わない。
油断してるわけじゃないが、少し退屈さえ感じるほどだ。
「行くぞ」
剛蔵が低く呟き、片手で腰に下げている中太の刀、雷霆刀に手をかけた。
適度な長さと厚みのあるその刀は、剛蔵の体格に見合った重量感があり、一撃で敵を叩き斬る力強さを誇っている。
山道の左右から、獣皮をまとった荒くれたちが現れ、俺たちを包囲しようとする。
「出てこい、全部ぶった斬ってやるぞ!」
剛蔵は挑発するように笑みを浮かべ、雷霆刀を鞘から引き抜いた。
金属音が辺りに響き、重々しい斬撃の準備が整う。
「お前ら、こっちに来たことを後悔させてやる!」
勇太もすでに準備を整えていた。
彼の流刃刀は細く長く、しなやかな刀身が俊敏さにぴったりだ。
目の前の敵を冷静に見つめ、薄く笑みを浮かべている。
「まぁ、やってみろや」
俺も大蛇刀を持ち上げる。
重く長い刀で、他の武器とは異なり、まるで竜の骨を削り出したような重厚さがある。
普通の奴なら、その重量に振り回されるだろうが、俺は軽々とそれを握り、刀を構えた。
「かかってこい」
山賊たちは咆哮を上げて突っ込んできた。
数は多いが、装備は雑多で、全員がバラバラな動きを見せている。
俺たちにはそれらの動きがまるでスローモーションのように見える。
「隼人、右を任せろ!」
剛蔵が叫ぶと、俺は頷き、前方にいる敵を狙った。
剛蔵が刀を振りかざし、山賊たちの一団へ突撃した。
雷霆刀が振り下ろされると、まるで雷が落ちたかのように、敵の身体が斬撃で裂かれ、血飛沫が上がる。
次々と倒れていく山賊の間を、剛蔵は圧倒的な力で切り裂いていく。
「お前らは雑魚だ。相手にならん!」
剛蔵は豪快に笑いながら、残った山賊を次々と薙ぎ払っていく。
一撃で相手の武器ごと叩き斬るその姿は、まさに圧倒的だった。
一方、勇太は流刃刀を素早く振り抜き、繊細な剣技で山賊たちの懐に入り込んでいた。
細く長いその刀は、まるで風を切るような音を立てながら、敵の急所を正確に捉え、一撃で仕留めていく。
細身の刀が相手の間合いを崩し、勇太は軽快に動き回りながら、敵を確実に斬り倒していく。
「まだまだだな!」
少し遅れて俺も大蛇刀を振りかざし、正面から突進してくる山賊の一団を迎え撃った。
その一撃は重く、広範囲を巻き込むため、複数の敵が同時に倒れていく。
大蛇刀の重量を活かし、俺はまとめて敵を薙ぎ払っていく。
普通の戦士なら扱えないこの刀も、俺にとっては何の負担もない。
「終わりだ」
俺の一撃で、最後の山賊が地面に倒れ込んだ。
辺りは静寂に包まれ、わずか数分で山賊の群れは壊滅していた。
「相手にならんな」
剛蔵が肩で息をしながら刀を納めた。
「ほんとにな」
勇太も刀の血を拭いながら笑う。
俺は黙って大蛇刀を地面に突き立て、しばし休息を取った。
山賊たちの無謀な襲撃は、俺たちにとってはまるで試し斬りのようなものだった。
俺たちが前進する間、後方で控えていたブラッドやレッドル、グリズラ、ナミラもそれぞれの武器を握り、敵を見据えている。
ブラッドが鉄棍棒を構え
「俺の出番だな!」
と声を上げた。
鬼人特有の筋肉で覆われた彼の体は、握りしめた巨大な鉄の棍棒と見事に合っている。
山賊が突撃してくるのを見て、ブラッドが軽く笑いながら一歩前に出ると、地面が震えるほどの重量感があった。
「かかってこい!」
山賊の数人が槍を突き出してきたが、ブラッドは怯むことなく棍棒を振り下ろし、敵の槍ごと山賊の身体を叩き潰す。
音と共に地面に倒れ込む山賊たちに、ブラッドは気にも留めず、次々と敵に棍棒を振り下ろした。
「この程度か!」
レッドルも父に続くように動き出した。
「俺もいくぜ!」
と叫びながら鉄の棍棒を握りしめ、軽快な動きで敵の懐に飛び込んでいく。
素早く敵の攻撃をかわし、棍棒が相手の防具に当たるたびに鈍い音が響き、敵が地面に崩れ落ちていった。
「こいつら、全然動けてねぇな!」
レッドルの棍棒が広範囲に攻撃を繰り出し、敵は次々と倒れていった。
グリズラは重い槌を肩に担ぎ
「来いよ! かかってこいやぁ!」
と豪快に笑っている。
彼女は俺よりも体格が大きく、その威圧感だけで山賊たちは怯んでいた。
しかし、怯む相手にも容赦はなく、一気に槌を振り下ろし、山賊をまとめて押し潰していく。
ナミラは静かに構えていたが、すぐに行動に移る。
「仕方ないね、終わらせるか」
とつぶやきながら、メイスを振り上げた。
軽く振ったように見えたその一撃で、敵は骨を砕かれ、その場に崩れ落ちていく。
無駄な動きが一切なく、確実に敵を仕留めていくナミラの動きには圧倒される。
「これで終わり……」
ナミラはまるで舞うようにメイスを振り回し、近づく者たちを次々と打ち倒していく。
無駄のない動きで、確実に敵を潰していくその姿は見事で、彼女のメイスは他の武器とは違い、一撃で敵の骨を砕き、その場に動けなくしてしまう。
山賊たちは、ブラッドやレッドル、グリズラ、ナミラの圧倒的な力の前に次々と倒れていった。
残った者たちは恐怖に駆られ、逃げ出そうとするが、その背中に鉄の棍棒や槌、メイスが容赦なく振り下ろされる。
「やっぱり、こいつらじゃ相手にならねぇな」
ブラッドが吐き捨てるように言う。
俺たちが前進する間、後ろでブラッドたちが最後の山賊を打ち倒していく。
魔物素材の武器を持つ郷田家の戦士たちに加え、鬼人や獣人の猛者たちが揃う俺たちには、山賊ごときは全く相手にならない。
「これで全部か?」
俺が刀を納めながら尋ねると、レッドルが棍棒を肩に乗せて前方を指差した。
「いや、まだ逃げてる奴がいる」
「追うか?」
グリズラが笑みを浮かべながら言ったが、俺は首を振った。
「いや、もういいだろう。行こう、先を急ぐぞ」
俺がそれを制すと、全員が頷き、再び道を進んでいく。
こうして、俺たちは何度も山賊に襲われながらも全て蹴散らしながら、大谷家の屋敷を目指して前進を続けた。
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