山賊

伊達家の領内に足を踏み入れて間もない頃、最初の村に着いた俺たちは異様な雰囲気を感じ取っていた。

村の人々の顔には、不安と疲れが滲み出ていた。


「何かあったのか?」


勇太が村の老人に尋ねると、彼は深いため息をついて答えた。


「ここ最近、山賊が頻繁に出没していてな。伊達家の交易がすっかり滞っているんだよ……あの山賊どもが、商隊を襲うもんだから、誰も旅に出られん」


この話を聞いて、俺たちはすぐに状況を理解した。

伊達家の領内の秩序が崩れつつある。

これでは郷田家の使者として訪れる俺たちにも影響が出るかもしれない。

さらに、商隊が襲われることで、伊達家の経済にも打撃が出ているはずだ。


「……これじゃ、伊達家に何も届かんぞ」


剛蔵が低い声で呟くと、勇太がすぐに反応した。


「なら、山賊を退治しよう。手土産の追加だと思えばちょうどいい」


俺は一瞬、その無謀さに驚いた。

村人たちの話によれば、山賊は50人近い大規模な集団だという。

いくら俺たちが鍛えているとはいえ、3人で50人を相手にするのは無謀すぎる。


「待てよ、勇太。50人近い相手に、3人で挑むなんて……」


俺が止めようとすると、勇太は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「隼人、お前ならできるさ。あの戦場で見たお前の成長、俺は忘れてないぞ」


剛蔵も同じく、無言のまま俺に頷いた。


「……お前ら、本気か?」


俺は二人の覚悟を確認したが、彼らはすでに行動を起こす準備を整えていた。ど

うやら、この村を襲う山賊を倒すことに迷いはないようだ。


「だったら、俺の案を聞け」


俺は二人に提案した。

山賊の数が多い上に、正面からの戦いは無謀すぎる。

だからこそ、俺は夜襲を仕掛けるべきだと考えた。


「山賊の集団が寝静まる夜を狙って、奇襲を仕掛けるんだ。夜の闇を味方につければ、少数でも圧倒できるはずだ」


勇太と剛蔵は少し驚いたような表情を見せたが、すぐにその案に納得した。


「なるほどな……夜襲か。それなら確かに人数差を埋められるかもしれない」


「剛蔵兄さん、どうだ?」


剛蔵も俺の提案に深く頷いた。


「お前、やるじゃねぇか。いい案だ。よし、それで行こう」


作戦は決まった。

俺たちは、山賊のアジトがあるという山中に向かい、隠密に動きながら夜襲の準備を整えた。

夜の冷たい空気が俺たちを包み込み、辺りは静寂に包まれていた。


山賊の野営地は、火の灯りでぼんやりと照らされ、集団はすっかり寝静まっていた。俺たちは息を潜めながら、彼らの様子を伺った。


「……今だ、行け」


俺が合図を出すと同時に、俺たちは一気に動き出した。

夜の闇を味方に、剛蔵と勇太が先陣を切って突入する。

山賊たちは不意を突かれ、混乱に陥った。


「何だ!? 襲撃か!」


山賊のリーダーらしき男が叫ぶが、その声はすぐに剛蔵の一撃によってかき消された。

勇太も次々と敵を斬り伏せていく。

俺もその混乱の中で冷静に動き、敵を倒していった。


夜襲の効果は絶大だった。

山賊たちは全く準備ができておらず、次々に崩れていった。

俺たち3人の攻撃に、50人近い山賊たちは為す術もなく敗北していく。


数時間後、山賊のアジトは完全に制圧された。


「……やったな」


剛蔵が満足げに言い、勇太も肩で息をしながら笑った。


「まさか、本当に勝てるとはな」


俺も同じ気持ちだった。

正面からでは無理だった戦いも、夜襲の効果で見事に成功したのだ。


山賊退治を終えた夜、俺たちは村に戻り、再び宿で体を休めていた。

村人たちからは大いに感謝され、すっかり気分は良かった。

しかし、その夜もまた、予想外の訪問者が現れた。


「またかよ……」


勇太が呆れたように呟く。

目の前には、7人の村娘たちが立っていた。

彼女たちは照れたような顔をしながらも、こちらに明確な意図を持って訪れていた。

言うまでもなく、強い男の種を求めているのだ。


「やれやれ、こりゃまた面倒だな」


剛蔵が苦笑しながら呟いたが、その時、彼の目が一人の村娘に留まった。

その村娘は黒髪黒目で少しふくよかで、細い目の笑顔は柔らかな雰囲気を持っている。


「……おい、あいついいじゃねぇか」


「なんだと、俺が先に目をつけたんだぞ!」


そうして、剛蔵と勇太がぽっちゃりした娘を巡って口論になった。

彼らはどちらもその娘を気に入り、取り合いを始めたのだ。

普段の訓練や戦場では見せないような子供じみた一面に、俺は思わず笑ってしまった。


「お前ら、そんなことで喧嘩するなよ……」


俺がそう言っても、二人は全く聞く耳を持たなかった。

むしろどんどんヒートアップしている。


その間、残りの6人の村娘たちが、俺の方に視線を向けていた。

彼女たちは、それぞれが俺にとっての異国風の美女に見えた。


青い瞳の娘、金髪の娘、そして瞳が大きく、顔立ちが整った娘たち。

前世の感覚でいえば、彼女たちはまさに天使のような美女たちだ。

俺にとっては、この上ない状況だった。


「……いいさ、俺が6人全部引き受ける」


その言葉に、村娘たちは驚きつつも微笑みを浮かべていた。

一方、剛蔵と勇太はその様子を見て、さらに眉をひそめた。


「お前、何考えてるんだ……」


剛蔵が気味悪そうに俺を見つめる。

どうやら、彼らにとってこの村娘たちは異様に映っているらしい。

青い瞳や金髪という特徴が、この世界の基準では奇異に感じられるのかもしれない。


「いや、俺にとっては彼女たちは天国だよ」


俺は笑って答えたが、剛蔵と勇太は首を横に振るだけだった。


「やっぱりお前は……ゲテモノ喰いだな」


勇太がそう言い、剛蔵も頷いていた。


それでも俺は気にせず、その夜、6人の村娘たちを相手にした。

彼女たちは異国の美しさを持っており、前世の俺なら絶対に手に入らなかったであろう存在だった。

こんなチャンスを逃す手はない。


翌朝、俺は少し疲れた体を引きずって外に出たが、待っていたのは呆れ顔の剛蔵と勇太だった。


「お前、本当に好きだな。どうしてあんな女たちがいいんだ?」


剛蔵が困惑した様子で言い、勇太も首をかしげていた。


「いや、俺には彼女たちが美人に見えるんだ。それで十分だろ?」


俺は笑いながら答えたが、二人はどこか納得がいかないようだった。

けれど、それでも彼らは俺の行動を責めることはなかった。


「ま、好きにしろ。お前はお前だしな」


結局、俺たちは村を出発する準備を整え、再び旅路を急ぐことにした。

伊達家までの道のりはまだ続いているが、俺は今の自分に充実感を覚えていた。


出発の朝、村人たちは喜び、感謝の言葉を口々に述べた。


「本当にありがとう! これでまた交易ができるようになる!」


俺たちは村人からの感謝を受けつつも、次の目的地、伊達家への旅路を再び進めることにした。


山賊たちのアジトには食料もかなりあったが、全てこの村で自由にしてくれと話してある。

金目の物だけは俺達が持って行くことにした。

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