第4話 魔王の腹心ガビエルとブリエル

 改めて自己紹介。俺はユウキ•タケウチ。異世界転移してハーレム生活を望む者。


 しかし異世界はインキュバスの手によってエリスという美少女以外攫われてしまっていた。


「俺はインキュバス魔王を許さない。色んな女性の靴下をクンカクンカして、タイツをペロペロして、ニーソックスをハムハムする生活が出来ないだろうが! あと、王様に命じられたから仕方なく魔王を退治するんだ。仕方なくね」


「最初の本音が酷すぎて巻き返し聞かないって! ユウキさん、下手なインキュバスより業が深いですよ!」


「酷すぎるって? 俺はそんな酷いやつじゃあないよ」


「いや、そんなこと考える人、魔王の右腕カビエルと左腕ブリエルぐらいですよ!」


 そう言いつつ何故かエリスさんは興奮しながら靴下を脱ぎ始めている。


「最低だ。俺って」



◇終劇



「それはそうと、カビエルとブリエルって誰?」


「靴下どうぞ!」


「えっ? ああ、うん。ありがとう」


「私は気持ち悪い趣味も肯定するタイプの聖女ですから」ニコッ


 エリスさんはハイライトが消えた瞳を揺らしながらそう言った。


 ええっ……そんなの聖女じゃねえよ痴女だろ。


「やめた方がいいよ? 悪い男の要求に応えるのは」


「もちろんです。悪い人の要求は一切呑むつもりはありません!」


 なんだこれは……二重の意味で罪悪感がすごい。


 それはそれ、これはこれ。渡されたものを嗅がなければ無作法というもの。俺は思いっきり靴下を鼻に当てて、吸った。


 ほうほう、最初一瞬だけくる女性特有の汗の匂い。そのあとはエリスさんの芳醇な香りが俺の鼻を突き抜けて脳内に直接叩き込んでくる。


 要するに、最高です。これが美少女の匂いかぁ。


 エリスさんは足をプルプルさせて赤面しながら涙目で俺の所業を見つめていた。やめろよ恥ずかしい。まるで俺が変態みたいだろ。


「それでもう一回聞くけど、ガビエルとブリエルって誰?」

 

「そ、そうですね……魔王の腹心。側近です。あの者達が魔王城への結界を維持しています」


 エリスさん曰く、魔王城は巧妙な結界を張り巡らせているらしく、ここ数年で魔王城に辿り着けた者は居ないらしい。


 結界を解くには魔王の腹心二人を倒さないといけない。


「本当はこの崖に魔王城があるはずなんです」


 エリスは虚空を指差しながらそう言った。うむ、崖しかない。良くも悪くも崖しかないとしか言えなかった。


 強いて言うならばサスペンスドラマにありがちな崖というか。最終回に犯人が飛び降りそうな崖だった。


「でもさ。腹心を倒したら魔王城が現れるとか言うけどさ。その腹心が魔王城に引き篭もってた場合どうなるん?」


「人類と魔族の不毛な争いが数十年、下手したら数百年続きますね。ちなみに、前魔王は三十年掛けて倒しました」


「ええっ……てことは前魔王の腹心は三十年も引き篭もってたの? 正気の沙汰じゃあねえや」


「間違いないですね」

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