第3話 仲間探し
王様から援助金をたんまりもらい、俺は武器屋に来ていた。
「メリケンサックとは、中々古風な武器を扱うのですね~」
「……エリスさん? なんで付いてきてんの?」
「あなた、とてもお強いでしょう? 魔王退治に行くならば私も連れてってほしいと思いまして。女性たちの仇を討ちたいのです!」
エリスは頬を赤らめながらも力強くそう言った。
「サポート魔法は得意ですから役に立つはず……」
ああ、そういう。ふむふむ、黒っぽい茶髪、長髪ロングで清楚な雰囲気。いかにも男性受けしそうな風貌。可愛い。ヨシッ!
「分かった。エリスさんが仲間第一号ということで!」
「ありがとうございます!」
◇聖女エリスが仲間になった!
その後、ギルドに仲間募集の張り紙を貼ったが、誰も来る気配は無かった。
ちなみに募集要項は『美人か美少女に限る』としか書いていない。なぜ来ないのだろう?
「募集しても無駄かと。綺麗な方や可愛いお方は皆既に、インキュバス魔王に洗脳されて攫われてしまってますから」
エリスは諦めたかの様にそう言った。
「この世界はインキュバスが魔王になってから、美少女と定義されてる方々が攫われるようになりました。私の村も綺麗な方はみんな攫われて……」
んで、今回エリスがターゲットになったと。
確かにギルドを見渡してみても、可愛い子が誰も居ねぇ。ていうかそもそも、少女が見当たらねぇ。
エリス以外可愛い子が居ねえ。オラこんな村嫌だ。オラこんな村嫌だ。美少女が居ねえ村は嫌だぁぁぁ!
そうだよなぁ。インキュバスだって美少女優先的に狙うよなぁ。エリスが奇跡だっただけで……
……なんでエリスは一番最後に襲われたん? もしかしてこの村、顔面偏差値レベチなん?
「インキュバスが女性を攫う過程に貞操を奪うというものがあります。インキュバスに貞操を奪われた者は洗脳されてしまうのです」
「ああ、つまり君はユニコーンなんだ」
「ゴホンッ、私は王様の御庭番にして周りから聖女様と呼ばれる程度には強くて。並のインキュバス相手には抗えるんです。前回は不意打ちを受けた過程で杖を吹き飛ばされたので、なす術なかったわけなのですが」
ウーン。不安だ。グダグダと言い訳垂らしていて弱く見える。
言うて俺だって最初の敵は騙し討ちで凌いだだけだし。倒せてないから人のことは言えないのだけど。
「そういや、さっき王様から聞いたんだけどさ。インキュバスって人間に擬態するらしいやん」
「そうですね。巧妙に男性へ変身してます」
「なんか見分け方とかあんの? ほら、間違って攻撃したら色々と不味いしさ」
エリスは『そうですねぇ』と髪を触りながらある男を指差してこう言った。
「擬態は完璧ではなく、あの方みたいに角と尻尾は隠せないのです」
なるほど、インキュバスには特徴的な角と尻尾があるわけだ。なら、目の前にいるイケメン寄りの男もインキュパスなんだな。
「ドロップキック行ってきます!」
「攻撃支援魔法かけときますね!」
強化ドロップキックをまともに食らったインキュパスはギルドの壁を突き破ったのち、一撃で沈んだ。ふう、油断も隙も無い。
「並のインキュバスなら一撃なのですねぇ……はえぇ、すっごい」
「いや、最初に戦ったやつにドロップキックを食らわせた時は一撃で沈ます事が出来なかった。つまり今回一撃で済んだのはエリスさんのおかげだ」
「「へへへへへへッ!」」
やれる! エリスと二人ならインキュバスもなんとかなる! 仲間なんていらなかったんや!
さっき不安に思ったことは心の中で謝っておこ。
◇おまけ
「ちなみに綺麗な女性が絶滅寸前な中、尚も外を彷徨いてるインキュバスは雑魚だと言われています。自己肯定感が高いほど強くなる種族ですから」
「おう……なんか。雑魚のインキュバスの気持ちが分かる。俺も昔はこっち側だったし……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます