第2話 王様の話が長すぎる
「よく来たな転移者よ。鳥は唄い、緑は芽吹き、インキュバスは蛆の様に沸き、花粉は跳梁跋扈するこの季節。良い土産話を持ってきたのだなエリスよ」
跳梁跋扈を会話に組み込んでる人初めてみた。ほしいままに跳ね回るって意味だっけな。
「この世界の全てが大地を祝福する季節に、今回王様に謁見すること大変喜ばしいと共に恭しく丁重に御礼申し上げます」
エリスさんはとてつもなく固い言葉で王様に語りかけていた。王様に謁見する礼儀なのだろうか?
「こちらこそ慎ましく感謝の意を述べよう。さて、前置きはこのくらいにして本題に入らせてもらおう。ここ最近魔王になったインキュバスが調子に乗っている問題についてだ」
「ああ、エリスさんが言っていた美少女を攫うクソミソにもならない魔王のことっすね。俺的には夢のハーレム生活を謳歌出来ないので、今すぐにでもバチボコにしばき回したいところなんすけどね」
「いや、一見して誰もがそのような結論に至る所ではあるのだが、実のところ魔王はわやくちゃに強くて手出しが出せないのだ」
『追討令は出しているのだがな』と王様が前置きした後、こう言った。
「このことを詳しく説明するためにはこの前起こった出来事を話しておかねばなるまい。ワシはキャバクラが大好きだ」
ん? キャバクラ? 今王様キャバクラって言った?
「キャバクラは女性が接待してくれる。ワシは接待されて上機嫌になる。彼等は身分差関係なしに対等に接してくれた。ワシに取ってキャバクラは、日々の明け暮れる様な政務を忘れさせるかの様な時間なのだ」
ああ、そうかい。早く本題に入ってくれ。
「その時間を醜悪の権化である魔王に妨害されたのだ。先日、キャバクラへ癒しに来たのだが可愛い子が誰もいなくなっていた。ワシは怒髪衝天と言った具合で魔王追討の命を出したのだ」
もしかして、王様が魔王に怒ってる理由。可愛い子をインキュバス魔王に取られたから?
「この怒りを分かってもらうには、わしとキャバクラの関係について言及しなければならない」
待て待て待て、私怨含んでるよな?
ていうか王様とキャバクラの関係なんて要らん。聞きたくない。
「ワシがキャバクラと出会ったのは20年前。とある煌びやかな商店街に似合わない老人が忙しそうに彷徨いている。ワシを見つめていたところから始まる。ワシはその老人に話しかけた。『おじいさん、私はキャバクラというものに興味があるんです! 庶民代表として手解きをお願いします』」
話を終わらせてください。お願いします。
◇三時間後
「『おじいさん、あなたには大切な人がいるはずです。浮気なんてしてはいけません』ワシはおじいさんにそう言ったわけだ」
話が長い! さらに言えばさっきから、他人のおじいさんの浮気話聞かされてるんだけど。三時間使って話す事なの?
おかしいだろ。異世界転移物は美少女がたくさん出てくるのが定石だろ。なんでおっさんの話を延々聞かされなければならないんだ。
「あの王様……」
「ん? どうしたエリスよ?」
「そのお話はまた今度ってことで、転移者ユウキ•タケウチのお話に移ってもよろしいでしょうか?」
エリスよく言ったぁぁぁ! アンタ神様か? よう王様の暴走を諌めてくれたな。ありがとう!
「おっと……少しばかり話が長くなってしまったかの」
なんだったんだこの時間。
「要約すると、ワシがソチを援助するから魔王を倒してきてほしいのだ」
「最初からそう言えよ!」
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