第5話 ガビエルVSエリス
◇エリス視点
ひとまず、私たちは今日は宿に泊まることにしました。ユウキさんは同室希望してきましたが、丁重にお断りさせてもらいました。
おそらく私がユウキさんを襲いかねないので。こう見えて私、一目惚れ気質なんです。
ユウキさんに助けてもらった以来、変なんです。聖女として不甲斐ない。
さて、インキュバス対策の結界も張りましたし、明日に備えて早めに就寝しましょうかね。
◇
「ふむふむ、やはり女神の加護を受けた聖女の匂いはいつ嗅いでも堪らない。今宵も楽しめそうだ」
そう思っていた時期が懐かしいと思えるぐらいには状況は切迫していた。私は寝込みを襲われていたのだ。
並のインキュバスなら寄せ付けない程度の結界を張っていたのに。
「あなた、只者ではありませんね? オーラ的にガビエルと言ったところでしょうか?」
「ほう、変化した我の正体を一目で見破るか。半端な結界術を使う割には教養はあるようだ」
「一応、私は聖女と呼ばれてますからね」
ガビエルの身体が顔を除いてみるみる悪魔的な姿へと変わっていく。角は羊みたいに伸びて、全身が赤色へ染まっていく。
「そうかい、話は終わりだ。貴様は今から魔王様の所へ連れていく。いや待てよ、貴様の処女を奪ってからでも遅くはないな」
隙を晒してるガビエルに私は上級風魔法『神風かまいたち』をぶっ放した。
ガニエルは『くだらん技だ』と言い、防御魔法を顕現させた。
私が放った魔法は防御魔法にぶつかり、そして大きな竜巻を作った後に散華した。見事に防がれてしまった。
「それでは貴様の処女を奪わせてもらう」
さすが魔王の腹心と言うべきか。私だけでは万事休すですね。私だけなら……
「一秒で服を剥ぎ取り、二秒で屈服させ、三秒で結合。四秒で果てさせてやろう!」
するとガビエルとは別の足音が聞こえてきた。そして扉が蹴破られる。
「エリスさん! なんか物騒な竜巻が発生したんだけど、大丈夫か!?」
さっき放った魔法には別の意図があった。それは魔法のぶつかり音を利用して彼をこの場に呼び出すことである。
「なっ、インキュバス!? ドロップキックしなければ!」
間髪入れずにユウキさんは飛び蹴りをガビエルに仕掛けていく。しかしそれをガビエルはあっさりと避けてしまった。
さらにその流れでユウキさんの胸ぐらを掴んだ。ガビエルはギリギリと音を立てながらユウキさんを締め上げていく。
「天秤投げじゃオラ!」
しかしただでは起きないユウキさん。ガビエルの手を掴んで、そっから引き剥がしながら投げたのだ!
ガビエルは一回転した後、何事もなかったかの様に立ち上がる。
「なんだてめえ、今までのインキュバスじゃあねえな?」
「私は魔王様の右腕カビエル。さっきはよくも邪魔してくれたな。楽には死なせんぞ」
「黙れ強姦魔!」
そう吐き捨てながらユウキさんは二本の棒を取り出し、それをガビエルの眼球に突き刺そうとした。間一髪、それをデコで受けながら避けるガビエル。
その隙にユウキさんが私の元まで駆け寄ってきた。
「大丈夫かエリスさん。まさか寝込みを襲ってくるとは」
「寝込みを襲うのはインキュバスの常套手段です」
「マジか。そこはサキュパスと同じなんか」
「私も迂闊でした。就眠する前に結界張っておいたのですが、まさか破られるとは」
まあ、相手が魔王の右腕ならこの結界ぐらい破ってきますよね。
「ていうかこのインキュバス、ヤケにイケメンすぎないか? アイドル事務所に所属してる系のイケメンというか。整形してるん?」
「否、我は素の顔がこれである」
「……ふざけやがって、俺は整形してまで顔を変えたのに……てめえは素でイケメンかよぉぉぉ!」
ユウキさんはプッチンと音を立てる様にキレ始めた。沸点の湧き方がわからない。
こうして、私たちは魔王の腹心ガビエルと死闘を繰り広げることとなる。
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