私の生きていく世界
第77話
深夜、意識が覚醒していく感覚があった。なのに体はピクリとも動かない。何か変だ。寝ているのに起きている。
ハッと目を開けば、正面でソファに座るギルバートさんの姿があった。いつの間に移動したのか、私はソファの前に設置された一人がけの椅子に座ってるみたい。やっぱり体は動かないけど、視界の片隅に映るベッドのみんなは、ぐっすり寝てる。
「ようやく覚醒したか、ミナ」
何か言おうとしたけど、口が動かない。
「おまえ以外、誰も目覚めない。私の術中に嵌っている」
「……!!」
「おまえは勝手に話せないし、嘘がつけない」
私を拐った時クリスにしたように、みんなに暗示をかけたんだ。背筋を恐怖感が走る。
「そう緊張しなくていい。おまえに少し質問するだけだ。それが私の任務だからな」
「…………」
「意識を保たせたまま暗示をかけるのは難しい。だが、全て自白してしまうことを獲物に自覚させた方が、その後も拷問の手間が省けてスムーズなんだ」
ギルバートさんが恐ろしいことを話した瞬間、誰かの手が彼の肩を掴んだ。顔を動かせない私の視界に入ってきたのは、綺麗な金の髪。
「レオン、起きていたのか」
ギルバートさんの驚いたような声に、レオンがフッと笑いをこぼした。
「俺は暗示をかけることは不得手だ。だからその分、敵の暗示に対する訓練は死ぬほどやってんだよ。さすがに、王宮で本腰入れて拷問やってるような、陰険な奴の暗示を解くのには苦労したがな」
「……そうか。それでおまえはどうする。私に暗示をやめさせるか?」
「…………」
レオンは思案するように黙り込んだ後、口を開く。
「ミナに自白させることは、クリスティを使って俺たちもやった。気は進まないが、ミナの潔白を証明するにはこれしか無いかもしれないな。ミナ、このまま続けさせてもいいか? ギルバートはこうでもしないと納得しない。女王に狙われ続けても困る」
確かにそうかも。私には聞かれて困る事ないし……。レオンにじっと目を見つめられて、私は目線と表情だけで了承の意を伝える。
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