第73話

真剣な私の頭上から、呆れたような声が降ってくる。


「ミナ、おまえは一体何がしたいんだ」

「採寸。レオンは私の、唯一無二の番長だもん。私、お店も出したいけど、やっぱり好きな人のために服を作ってたいの」


 前回巻尺を使って採寸済みだし、レオンの体型は変わってなさそうだから、今回の結果は確認程度だ。満足した私が身体を離すと、レオンは服を直しながら、疲れたように長いため息をついた。


「おまえは、本当に……無自覚なんだろうな、阿保女だけに」

「なにそれ。私、阿保なことなんかひとつも言ってないじゃん!」

「おまえ、今夜覚悟しておけよ」

「はぇっ!?」


 ボッと火がついたように反応する。そういえば採寸と思って夢中になってたけど、とんでもないことしちゃったような!?


 動揺する私を映し込み、ヘーゼルブラウンの瞳が面白そうに笑む。


「俺は今夜と言っただけだが。今何を想像した?」

「う、うるさい! やっぱりヘンタイ!」


 レオンの胸を拳で叩いていたら、扉がノックされた。レオンの返事を聞くなりノアが入ってくる。らしくもなく性急だ。


「レオン様、客人です」

「誰だ? 女王の使者は来たばかりだし、他にここを訪れる者などいないはずだが」

「それが、ギルバート様が……」

「なんだと?」


 レオンは眉を寄せた。

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