「今夜覚悟しておけよ」
第71話
朝食室で食事を摂る不機嫌な顔を、そっと伺う。
いきなり変態と罵られて枕を投げつけられたレオンは、当然のようにムスッと怒ってしまった。確かに変態チックなことは何もされてないし、覚えてる限りではすごく優しかったんだけど、けど! 顔を合わせるのが恥ずかしくて、つい。
私がレオンをチラチラ気にしながら朝食を摂っていると、レオンの背後に控えるノアが、遠慮がちに声をかける。
「レオン様、女王陛下との謁見は」
さっきもその話をしてたけど、深刻な問題なのだろうか。
「だから、応じないと言ってるだろう。ミナを渡す気はない」
「しかし断るわけには……」
「断れ。獰猛な犬を番犬にして国を守っているんだ。噛みつかれるリスクは向こうも承知のはず。アスター家の領地は広い。……いや、領地など最早関係ない。こちらが吸血鬼を集めて反乱でも起こせば、国は分裂、女王軍はほぼ全滅する上、他国に攻め入られて全て終わりだ。つまり、滅多なことはしてこないだろう」
ノアは真顔だけど、付き合いも長くなってきた私にはわかる。彼は困っている。そしてレオンはそれをわかっていて、敢えて無視している。
「俺たちは人間ではないが、人間達とその王を脅かしはしない。最も危険で不便な国境付近に息を潜め、国を守り貢献までしてやっている。だが平等だと思い上がるな。使者にはそう伝えろ」
「……承知しました」
ノアはアダムとイヴを呼んで、レオンの背後に代わりに立たせると、部屋を出ていった。
◇ ◇ ◇
食事を終えた後、私はレオンと執務室に入った。
「おまえが元の世界に帰る手がかりを探しに行きたいが、俺はおまえのそばで、おまえを守る必要がある。おまえを連れてエルドラに行くのも危険だ。しばらく見送るしかないな。すまない」
「ううん、そんな……私のことは気にしないで」
私、変なのかな。向こうには両親も友達もいて、何より私自身の抜け殻の身体が心配だし、早く解決したいはずなのに。
レオンがそばにいてくれることが嬉しい。手がかりを探すより、レオンにそばにいて欲しい。すぐに帰りたくない。未だに、そう強く思ってる。
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