第70話
なんだかすごく眩しい。そして瞼が重い。ぎゅっと瞼を閉じるけど、眩しさは変わらない。朝日かな? まだ寝足りない。
「うーん?」
むにゃむにゃとうわごとのように呟きながら、往生際悪く瞼を閉ざす。なにか、身体に密着されてるような……?
「はっ!?」
思い切り覚醒した私は、恐る恐る横を確認する。そこには、私を抱きしめながら長いまつ毛を伏せて眠る、作り物のような顔立ちの、半裸の美しい男。
男らしいラインを描く肩から胸、腹部、引き締まったしなやかな体躯。
思わずまじまじ見惚れていると、綺麗な弧を描く眉が顰められる。ゆっくり開いたヘーゼルブラウンの瞳とばっちり目が合い、驚愕と羞恥で思わず混乱した。
「きゃ――んむ」
「早朝から騒ぐな」
悲鳴をあげかけた口を塞がれた。昨夜のことをあまり覚えてない。私はいつ眠ったんだろう?
「私、私……レオンと?」
おずおずと尋ねれば、レオンは不機嫌に眉を寄せて、私の鼻をぎゅっとつまんだ。
「むぐっ、何するの」
「最後まではしてない。おまえが途中で寝たからな!」
お預け食らわされて死ぬかと思った、と呟かれて、真っ赤になりながら気まずく目を伏せる。
「そ、そうだったんだ、ごめん……」
「次は、最中に呑気に眠るなよ、阿保女」
「え、次!?」
「なんだよ、またお預けか?」
「い、いや別にそういうわけじゃ」
重たいため息を吐き出して、レオンは朝日を浴びて輝く綺麗な金の髪を、くしゃくしゃとかきあげた。
「とりあえずおまえ着替えろ」
「え?」
「ノアやクリスティにその姿を見られたいのか?」
はっとして見下ろせば、シーツを被っただけの素っ裸な自分がいる。
「へ、ヘンタイッ!!」
私はレオンの顔に、思い切り枕を投げつけた。
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